横浜みなとみらいでは2016年から毎年「お城EXPO」が開催され、もはや「年末の」風物詩になりました。
拙者も、初年度は「コレ本当に面白いの?」と懐疑的に見物しに行き、2年・3年・4年と経つうちに
なるほど安定感が出て来たなと楽しめるようになり、例年のように雑感を上げてきましたけど
もう2020年、2021年はオイラがとやかく言わなくてもという感じでレポートしなくなりましたw
(いや、ちゃんと行ってはいるんですよ。一応、今のところ皆勤賞です)
そんな中、今度は「夏に」「鶴見で」新たなお城イベントが誕生!
その名も“城熱祭(じょうねつさい)”だそうです。ふむ、面白い名前を付けたものですねw
どうやら、事前のネット情報を見る限り城郭模型や縄張図、イラスト、それに
プロの写真家の方が撮影した城郭写真を展示する展覧会?という内容。
それに加えて、特定の日には講演会やワークショップ等も開かれるとの事。
何となく思うに「EXPO」のつまみ食い的な感じ?EXPOで例年やっている模型展示や写真展示を
かいつまんで再構成―――と言う風に推察したんですが、果たしてそれって内容的に十分なものなの?と
ちょっと物足りなさを覚えたのが、“正直な”最初の感想。
これで前売券800円、当日券だと1000円(講演会などは更に別)かぁ…。確か「EXPO」は1500円だったよねぇ。
EXPOの価格に対して見合う内容なの?折しも、ちょうど同じ時期に大阪でも「お城フェス」のようなものがあり
そっちはどうやら丸々「EXPO」同等なイベントの様子。大阪と横浜、同時期に対抗してやってるの?(爆)
果たして城熱祭とやら、どんなもんなのかと期待半分疑問半分で行ってみたのでございます。
城熱祭の開催期日は2022年の8月10日〜15日。その真ん中、12日の金曜日に参戦してきました。
我が家からバスと電車を乗り継いでJR鶴見駅まで赴いたのですが、世の中はお盆休みの真っ最中。
おかげで駅まで行くバスは平日なのに土曜ダイヤで運行…そのせいで乗り継ぎが悪くて
普通に考えて家から1時間もあれば到着する鶴見駅までが1時間半もかかってしまった (^ ^;
まぁそれはオイラのリサーチ不足なので良いとして、いざ駅の改札を出て開催場所へ向かうのですが…

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JR鶴見駅東口
JR鶴見駅東口を出て、すぐ右側にある市民ホール(のような場所)が会場。
ドラッグストアの脇にあるエスカレーターを上った所がそうらしいのですが
現地に到着してみれば、何もそれらしき表示が無い。そして「EXPO」のような
人だかりがある訳でも無く、それどころか全然ひと気が無い。
一瞬「本当にここで合ってるの?場所間違えたか??」と不安に苛まれ…。
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恐る恐る上に上ってみる。それでも全然人が居ない。え、マジ?
いよいよこれは本当にマズったかと焦った所で、もう1階上が会場だとの
表示に気付き、今度こそ大丈夫か?と疑問を抱きつつ3階へ。
で、やっとこの掲示に遭遇。
良かった、ここで合ってた〜!!! (T_T)
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でもね、EXPOのような大混雑を予想していたので、ちょっとガラガラ(失礼)な展示フロアを見て
やっぱり何か間違えているんじゃないかと不安なまま、中に入ってみると
主催者の二宮博志さん(城郭復元マイスターの肩書で「城ラマ(城郭ジオラマ)」を作っていらっしゃる方)自らが
お出迎え下さり、チケットの確認を。で、念のため伺ってみましたが展示作品の撮影OKとの事。
絵画作品や写真展示は「1点ごとの個別撮影はNG」だけど、会場全体を俯瞰して雰囲気を撮るのは構わないそうで。

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一応、こんな感じで。
二宮さんに追加でお訊きしたら
「ネットに上げるのもOK」ですって。
むしろ「バンバン上げて告知して下さい」だそうでwww
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そんな訳で、いざ会場内へ!
展示品をいくつか御紹介いたします〜。

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城ラマ 八王子城
まずは二宮さんの作品。城ラマ、やっぱりクオリティ高い!
こちらは八王子城の御主殿〜山上部をアップで撮影。
ケース越しに撮ったので、天井のライトが写り込んでしまってますが…。
それは兎も角、こうして立体模型で見ると
山の高さや急峻さが良く分かります。
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お城ジオラマ 皆川城
こちらも城郭模型ですが、二宮さんの作品ではなくて
結城上野介某さんのモデル。法螺貝城と称される
皆川城の様子が良く分かります。
城ラマとは違いますが、これまた凝ってる…。
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絵画展示 藤井尚夫先生
続いては絵画の展示。これは藤井尚夫先生の作品。
個人的に、お城系絵画では一番美しく思えて好きなんです!
琉球の城郭をいくつも展示しておりました。
建物のある勝連城の画像って初めて見た!
やはり藤井先生の俯瞰図は精緻で綺麗だなぁ。
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絵画展示 香川元太郎先生
そして城郭絵画と言えば香川元太郎先生!
雑誌「歴史群像」等ですっかりお馴染みです。
ここに展示されている絵は全部見た事あるなぁ(笑)
でも、本に載っているより大きなサイズなので見応えあります。
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縄張図展示 西股総生先生
城と言えば縄張図。オイラは全然描けませんが…。
軍事的な観点から(城は軍事拠点ですから)
城郭研究を突き詰めている西股先生の縄張図です。
こうして額装していると、縄張図も立派に芸術品!
そして杉山城に塙城などなど、充実のラインナップ★
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と、ここまで見た所で二宮さんの城ラマ解説が始まったので拝聴。
滝山城の模型を参照しながら、縄張や復元考証などを伺いました。

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城ラマ 滝山城
説明なのでカバーケースを取り外して下さいました。
これでライトのテカりが無い写真が撮れます(爆)
滝山城の水源とか、池には弁天を祀っているとか
それに関する時代背景、武田軍の侵攻経路は?などなど
模型を使ってこそと言う解説を色々とお聞きしました。
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二宮さん、城ラマの制作にあたって藤井尚夫先生に監修をして頂いているそうで
なるほど、こうやって建物の配置とかを考察しているんだねー…と感心。
弁天信仰(滝山城だけじゃなく、鉢形城や小田原城でも関連遺構があります)を後北条氏が擁護したのは
多分に鎌倉幕府執権北条氏の事績を意識しての事だとか、城ラマを作るには現地を完全踏破して遺構を確認し
立体模型の構造データを計算しているとか、そういうお話を色々と。特に滝山城では
この写真で一番手前側にある急峻な崖に幾筋もの土堤らしきものが見受けられ
これは恐らく竪土塁ではないか?通説では、この上にある曲輪は住民避難用の曲輪(実戦用ではない捨曲輪)だと
言われているけど、こんな重装備な竪土塁が連続するならむしろ最前線の攻防戦が行われる場所じゃないか?と
二宮さんなりの独自解釈を面白く承りました! (^-^)
それにしても、滝山城って平山城だと分類されますが、こうやって模型にしてみると
やっぱり多摩川側の崖が如何に急激で、山城並みの堅固さを誇っていたのかが「目に見えて」分かります。
では展示品の続きを。

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城郭写真 後藤徹雄先生
城郭写真のコーナー、後藤徹雄先生の作品です。
苔むした石垣のように、パーツをクローズアップした作品や
雪化粧、或いは桜の花と合わせた城という具合に
いわゆる「絵になる」作品などなど、写真をかじる人間には
色々と“刺さる”作品が並んでいました。
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城郭写真 畠中和久先生
そして「EXPO」でもお馴染み、畠中和久先生の作品です。
ドローン空撮、水鏡、早暁写真など
プロならではの機材&技術を駆使した撮影!
「これ、絞りと光量のバランスをギリギリの線で調和させてる」と
流石のテクニックに御見逸れ致しました m(_ _)m
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城郭写真 五島健司先生
最後は城郭写真の大家・五島健司先生の作品。
五島先生の写真はもう言うまでも無く芸術的。
兎に角、どれもこれも「美しい」この一言に尽きます。
城を撮っている人間としては…もう憧れの存在です。
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展示コーナーの一番奥にあったのは「小机城コーナー」!
小机城コーナー
地元横浜の名城・小机城に関して
実地の映像、城ラマ、イラスト、縄張図を勢揃いさせて
多角的に見られるようにしたコーナーになってます。
これ、二宮さんの“小机城愛”がひしひしと伝わってきます(笑)
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と言うのが大まかな展示品でした。この他、物販なども少しばかり。
一巡した所で再び二宮さんのお話を伺えまして、八王子城の城ラマをじっくり見せて頂ける事に。

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超絶技巧!
今度は八王子城のカバーケースを取り外して下さいました。
見て下さい、石垣まで細かく削り込んでいるんです!
アップにした写真ですが、これ物凄く小さい部分でして
左側に建っている建物が1cmくらいの大きさ。そんなスケールで
石垣をじっくり形作っているのですから、もう驚き! Σ( ̄□ ̄;;;
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城ラマの制作には、実地調査から3Dデータ入力そして成形まで、諸々合わせて1点あたり6ヶ月ほどかかるそうです。
ところが八王子城の城ラマ、八王子市からイベントに合わせて制作して欲しいと依頼を受けたものの
期日まで2ヶ月しかなく、最初は無理だと断ったそうで。それでも市側の熱意に押されて作ったのですが
色々とデータ不足な所は否めないらしく、完全版と言えるような出来栄えではない…と仰ってましたが
これだって十分な完成度!いやホントに凄いですよ〜!!!
伝大天守から全域を望む
模型ならではのアングルで撮影。そして、模型だからこそ
容易に全景が把握できる訳で、麓から見上げる視線だと
明らかにこの伝大天守と呼ばれる曲輪が八王子城内で
最も標高が高い位置なのが分かります。
この「西側阻塞群」こそ八王子城防衛の要、
対豊臣軍を想定すれば、こここそが八王子城の
最前衛である筈だと、二宮さんは力説しておりました!
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余談ですが「城ラマ」の単語は二宮さんが商標登録されているので、単に「お城のジオラマ=城ラマ」ではなく
二宮さんが作った物が城ラマで、それ以外は「城郭ジオラマ」って言う使い分けを皆様にお願いしたく m(_ _)m良しなに
とまぁ、こんな感じで「城熱祭」を観覧して参りました。
一通り拝見させて頂いた上での感想を申し上げると、つまりこれは紛れもなく「城アート展」なワケですな。
城郭を題材にした「模型」「絵画」「写真」こうなると「縄張図」も芸術品です。
(もちろん、縄張図だって立派に製作者の“作品”なのは重々承知してますよ)
最初は「『EXPO』のつまみ食い的な感じ?」なんて言ってましたが、こりゃもう別物。
「城熱『祭』」ってタイトルだと、何だかちょっと賑やかしい感じに思ってしまうのですが
むしろ厳かに美術を嗜むようなイベントだと言うのが正解なんだと思います。
実際、展示数こそ少な目でしたがその分クオリティの高い出展ばかり。
「EXPO」がどちらかと言うと“質より量”という雰囲気になっているのに対して
「城熱祭」はそうではなく“量より質”といった展示内容な訳でして。
そうなると、観覧客がドッと押し寄せるような博覧会ではなく、個展が開かれているような
静謐&上品な展覧会なんだと、考えを改めた次第にござりまする。
そこでいくつか注文…いや、個人的に提言をば。
まぁ確かに「城熱祭」公式さんの説明を見れば、この展示内容は「城アート展」の部分だけであって
その他にトークショーやワークショップなんかを全部合わせて「城熱祭」との事なので
確かにその通りだって感じではありますけどねw
ただ…そういったトークショーやワークショップの日程は8月14日にばかり集中しているので
「熱」の部分は随分偏った配分なのかなぁと(苦笑)もう少し他の日にも平均的に揃えて頂ければ (^ ^;
EXPOのレポでも申し上げましたが「城熱祭2022」と題しているからには「2023」「2024」と続くんでしょう。
今回は関東の城メインで構成したようなので、恐らく次は別の地域の城?という内容になるのでしょうが
欲を言えば、もう少し「数」も用意して欲しいかなと。前売り800円、当日券1000円でしょ?
例えば、国立西洋美術館の常設展は500円。東京国立近代美術館、林原美術館も同様。
トーハク常設展、永青文庫やジブリ美術館(笑)は1000円。江戸東京たてもの園なんかは400円!
鉄博は1330円、京都鉄道博物館が1200円、リニア・鉄道館が1000円…ってこれは脱線(いや、鉄道ネタで脱線はNGだろw)
無論、これより高い料金(特別展とかね)の美術館も多々ありますが、1000円のチケットに見合うなら
もうちょっと色々と見せて頂けないものかと思うのですわ。いやまぁ、運営側とすればそんな簡単な話じゃないのでしょうが。
逆に、今回の「城アート展」に見る側から値段を付けるなら個人的には600円〜700円?ぐらいかなぁ。
数を出すとなれば必然的に、開催する「ハコ」ももう少し大きく…と言うのは贅沢な注文ですけど
(今回の開催場所となったサルビアホール、駅近(というか殆んど駅と一体化)なのでそれはそれで魅力的なんですが)
せめて「城熱祭はこちら→」と言った、分かり易い案内板くらいは出して頂けたらなー、と。
何せ駅の改札を出た所から展示室の前に至るまで不安だらけで赴いた訳ですから、あれはちょっと改善して欲しいですなぁ。
ついでにもう1つ、お盆休みにぶつけてくるのはどうなの?
オイラは帰省とか全然無縁の人間なので、むしろヒマなお盆休みに開催してくれるのは大歓迎ではあるのですが
世間一般とすれば、田舎に帰る予定があるから城イベントには行けないよ〜!と言う人が大多数なのでは?
運営さんとしても、恐らく集客力を下げる日程だと思うので再考した方が良いと老婆心ながら思うのです。
いやホントにオイラとしてはお盆休みのイベント万々歳ではあるのですけど、でも冒頭に記した通り
バスの運行が通常ダイヤと異なっていたりとか、細かいトラップとかがネックになるとかで調子狂うんですわな。
時期の不都合はEXPOにも言えるんですけどね。年末追い込みの一番忙しい時に開催するなよ!!!って (▼▼メ 憤怒
とまぁ、「城熱祭」と言うよりはその中の「城アート展」だけのレポになりましたが
総じて言えば、贅沢な展示内容を堪能するイベントだったので予想以上に楽しめました。
講演会なんかはこれからなので、どうなるのかな?
そこも含めて見ないと「城熱祭」完全制覇とは言えないのでしょうが…。
あぁそうそう、展示会場を見てクイズに答えると記念品として団扇が貰えるのは豪華な企画ですね。
この団扇、拙者が見た時には3種類あって販売もしていたので、1つは記念品として頂きましたが
残り2つも「お買い上げ」させて頂き、3つとも入手しました(笑)

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団扇3種
香川先生の小机城俯瞰イラスト、畠中先生の山中城空撮写真、
そして二宮さんの城ラマ3Dデータ図面。滝山城解説でもこの3D図面を
縄張図代わりに使ってましたが、これが物凄く緻密で素晴らしい!
近年、赤色立体地図が城郭探査に革命を起こしていますが
この3Dデータ図も、色々と活用できそうな気がします。
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(2022年8月14日 00:40 校了)
8月14日 23:30 追記
拙者が行った2日後の14日、城仲間の彩風さんがこの展示を見に行った所
@駅前から会場までの誘導係の方が配置されていた
A展示品個々の撮影も「キャプション(解説板)込みでなら」可能になった
そうです。改善が素早い!
人員が少ない中、運営さんの努力に敬意を表します。来年以降も期待してますね〜♪
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