★★★相州乱波の勝手放談 ★★★
#30 お城EXPO2016を見てきました…が
 




2016年12月23日〜25日の3日間、パシフィコ横浜会議センターで
「お城EXPO2016」というイベントが開催されました。簡単に言えば
「お城をネタにした、全国の観光物産などの一大展示会」という感じ。
オイラの周りの城マニア達(或いは、そのテのネット情報)ではかなり評判になっていたイベントだったんですが
正直、オイラ自身としてはイマイチ「?」という疑問符が。「これ、そんなに有意義な出展ってあるか?」と。
まぁ、そうは言っても年末年始の忙しい最中(特に職業柄、年末は無休に等しいんですけどw)奇跡的に
12月23日に休みが割り振られたので、物は試しに行ってみようかと足を運んでみました。
パシフィコなら30分ちょっとで行ける距離ですので、軽〜く行ってサッサと帰れば良いかってなお気楽さで(苦笑)

以下、とりあえず主な展示内容をダイジェストでご紹介していきます。


@熊本城石垣修復現場で発見された“謎の模様の刻印石”
石垣の石に目印として刻印を振る事は良くありますが、この石は“何だか良く分からない模様”が
刻まれていたという物。先般の熊本地震で甚大な被害を被った熊本城でありますが、逆にその事で
今まで埋め込まれていた石が露出し新たな発見になった、ってな話らしいです。んで、当の石材というのがコレ↓
※画像をクリックすると別頁で拡大表示します(以下同じ)熊本城石垣の刻印石
刻印石の概要こちらがその説明書き

A熊本城復興支援コーナー
その熊本地震による熊本城内各所の被災状況を一覧で展示。
復興支援(と言うか、熊本への観光誘致)に関わる案内も色々と。
熊本城の地震被災状況 被災状況概説
あまり詳しく報道されていませんでしたが、気になっていた“二様の石垣”が無事だったのをここで初めて知りました (^^;

※二様(によう)の石垣
熊本城の石垣における「最も有名な名所」と言える地点。
加藤清正が築城した当時の石垣に、後年に入部した細川氏が
上から被せるように石垣を拡張した事で、新旧二様の工法が
混在して見られる事から“二様の石垣”と呼ばれている。

くまモン登場! さのまるも登場!!
熊本の応援にくまモンが登場し、その応援にさのまるも登場し(笑)

B城郭の浮世絵展 〜松アコレクション〜 / 厳選城絵図展
読んで字の如くと云う事ですが、城を題材にした浮世絵や、全国各地の名城の縄張図を展示したコーナー。
まぁ、こういうヤツですわ(浮世絵もそんな感じで)これは伊予松山城の縄張図

C城のジオラマ模型展 / 現存十二天守模型展
ジオラマ製作のプロが製作したという全国40城の模型やら、全国に12城しか残らない
江戸時代以来の現存天守(+開催地という事で神奈川の小田原城天守)の模型を一堂に展示したブース。
謎の福岡城…←ホンマに実在したんかいな?という福岡城天守…だそうで
現存天守の模型は安定感抜群で→現存天守シリーズ

D城めぐり観光情報 / 日本100名城写真展
お城で有名な日本各地の観光地自治体が出展する観光情報配布ブースが並び、その隣には
財団法人日本城郭協会が選定した日本100名城を紹介する写真パネルが整列。
松江市ブース
松江市のブース。こういう感じで、名物や観光情報をアピール!
細かく書かなくてもお分かりだと思いますが、こんな具合に
全国各地の自治体が観光情報を宣伝してました(ありがちなネタ)。

彦根市ブース
彦根市ブースには当然ひこにゃん、それに
しまねっこ+シロモチ君で大混雑!
圧倒的知名度のゆるキャラを持ってると強いですねぇ。


Eお城EXPOフォトコンテスト / 城の自由研究優秀作品展
城の写真コンテスト、というのはそのまんまで(笑)
全国の小中学生を対象にした「城の自由研究コンテスト」に応募され、文部科学大臣賞などの受賞作も
ここで色々と展示されてました。まぁ、他人様の写真や研究作を転載する訳にはいかないので
これは写真ナシという事でご了承下さい (^^;
念のため申し上げておきますが、お城EXPO内では全展示が写真撮影可でしたのであしからず(主催者確認済)。

Fお城シアター / ステージイベント
某ヒストリーチャンネルや、地元神奈川のTV局・tvkなどによる映像作品の上映や
ライブステージでのイベントなどもありましたねぇ。
家康くんのステージライブあっ、家康くん…(クイズ大会の一コマ)

Gお城EXPO検定 / ワークショップ / 戦国魂イベント
まぁ、そういうのもありましたw

H土産・グッズ・書籍販売会
まぁ、こういうのもありますよねぇwww
正直、それほど「これは欲しい!」と思うような物はありませんでしたが (^^;;;
それにしても、今のウリって「スマホアプリ」が急速に増加している事。
スマホで見られる〇〇とか、スマホで遊ぶ××とか…。流行りモノとしては面白いだろうけど
スマホ持ってない(全然使う気がない)オイラには全く無縁なんで、アプリの宣伝をフロア中に響く声で
叫ばれても、ちょっと迷惑なんだよなぁ…(使う人には良いんだろうけどさぁ)。




と、こんな感じの展示が並んでおりました。




が、敢えてオイラは色々とダメ出しをさせて頂きたい!
くれぐれも誤解なきよう願いたいのだが、不満点を並べてケチを付ける訳ではありません。
お城愛好家としての「建設的意見」として申し上げるのでございます。
いやまぁ、別に偉そうな事を云う地位も権力も何もありゃしませんがね(滝汗)

お城を題材とした“お祭り”としては良いコンテンツを並べたと思います。今まで城に興味の無かった人や
ありきたりな観光情報では飽き足らない人に対して違った切り口からアピールする方法としては
頑張って良く揃えたものだと評価します。だから、これはこれで良いんです。否定はしません。
前世紀ならば「お城?古臭〜い!」と見向きもされなかったであろう“城郭”や“歴史”というネタは
今や“観光産業を支える優良アイテム”になっている(時代は変わったなぁ…)訳ですから
この方向性はもっともっと発展充実させていくべきでしょう。

ただ正直な話、お城の専門性を追求した展示は@とAくらい?なものでしょう。
@にしても、熊本城で発見された興味深い石材は他にもあった筈なので、1個だけの展示というのは寂しい。
Aの展示は、もっと大きなコーナーを取ってより詳細な情報が欲しかった。それくらいは出来る筈。
と言うか、時節を考えるならそうすべきであろうかと。
Bに至っては…城マニアには全く物足りない内容。数は少ないし、縄張図は大半が「模写でしょ?」という貧相さ。
そんなに目の肥えていないオイラですら一目見ただけで「本物じゃないねぇ」と直感できるモノばかりでした。
Cは“イベントのネタ”としては面白いけど、それこそオイラは自分で模型を作り込んでしまったので(焔硝蔵#21〜#26)
「別に誰でも作れるじゃん?」とか「この出来栄えはちょっと…」と思ってしまったり(作者の方すみません)。
Dは、本当に“どこの観光イベントでもやっている”内容のオンパレード。別にこれを見るためだけに
お城EXPOへ行く人は居ないんじゃないかと(だからと言ってこれ無しではイベントが成功しないでしょうが)。
Eは良かった!城の専門家があれこれゴタクを並べるより、綺麗な写真を眺めたり
子供がここまでの物を作るのかと感心する方が、イベント展示としては良心的かと。
でもDと同じく、これを見るためだけにお城EXPOへ(以下略)

辛口に酷評すれば、今回の展示は殆どが
“お遊び大会だ”としか思えないようなものばかり。
上に書いた通り、お城アピールの間口を広げるにはそれでOKなので、この展示は
そのまま次回(があれば)も継承すべきですが、仮にも“お城EXPO”つまり「博覧会」と銘打つイベントならば
もっと専門性や学術性を重視した展示も用意すべき筈。実は大学教授や有識者を招いた講演会も3日間
絶え間なく行われていたんですが、それは料金の高い「プレミアムチケット」を購入しなくては観覧できないという仕組み。
そう、お城EXPOは入“城”料を払わないと参加できない有料イベントなんです。わざわざ金を払ってまで見に行っているのに
全然専門性のない展示ばかりで、講演会見たけりゃもっと金をよこせだなんて…ちょっとアコギじゃないですか?(怒)




学者や識者を招くのにギャラがかかる、つまり入城料も高くつく、というのは尤もな話。それは仕方がないと納得しますが
それならば、ギャラとは関係ないその他の展示はもっと充実させてくれないと「次回も行くか?」と訊かれても肯定できません。
とりあえず、素人考えながらもオイラが「お城EXPOには用意して貰いたかった展示」をいくつか挙げてみますと…



@2016年(或いは直近数年)の全国各地での発掘調査総覧
ごく最近なら小田原城の“謎の階段”とか、沼田城や駿府城の天守台近辺の発掘、
真田丸推定地の確定、指月伏見城それに秋田城や桧山城などなど、各地の調査結果を
「パシフィコに来れば全部まとめて見られる!資料も貰える!」というような
見逃し救済にもなる感じの展示ブースとかがあれば…。1年間に行われる現説の量たるや膨大なものですし
北海道から沖縄までという広範な範囲で、時間や費用も限られる中で、いくらお城好きな人間といえど
そう簡単にあちらこちらの現説に参加しまくるというのは無理な話。なので、それらを一括して展示してしまえば
「パシフィコ(お城EXPO)は現説の聖地!お城マニアなら必見!!」と言わしめる事が出来るのではないかと。
当然、お城EXPO“2017”でやるならば2017年の総決算で!

A「城郭専門業者」の展示
(株)エスさんとか3kidsさん、粟田建設(穴太衆ね)など、城郭復元やデータ研究などに特化した
“その筋では有名”な業者の展示ブースがあれば、より多様な面白さが出てくると思う。
物販業者が色々と出ていましたが、そうではなく「企業アピール」や「業績展示」という題材でも
お城EXPOに参加する業者があっても良い筈では?こういう企業の担当者さんから
直接“生の声”を聞いてみたいとも思いますし。

B東日本大震災後の各地城郭復元状況を解説するブース
2016年は熊本地震による熊本城の被害がクローズアップされましたが、いやいや
まだ東日本大震災の後遺症が残る城、或いはそこからの復旧作業に邁進している城もあります。
そっちの展示だって出して欲しいし、熊本地震についても熊本城以外の被害状況説明も…。
加えて、倉吉地震被害とか春日山城の土砂災害被害とか、色々と気になる被災情報も教えて下さい!

C全国各地の城郭復元工事(運動)の状況解説
名古屋城(本丸御殿+天守?)、二条城、金沢城など現在進行中(もしくは小田原城天守のように終了したばかり)の
城郭復元工事の進捗状況紹介とか、高松城天守復元は果たせるのか?小浜城や江戸城はどうなる?などなど。
これから建築寿命を迎える昭和再建天守(や櫓建築)の建て替え動向というものにも注目。

D諸自治体・観光協会秘蔵の城郭資料・映像集の配布・販売
資料集や出版物はもちろんの事、観光協会や現地資料館だけで上映しているような「城郭再現CG映像」といった
秘蔵の映像ソフトを、「お城EXPOでは特別に頒布!」という事をすれば、飛びつく客が居る筈(オイラもその1人w)

例えばこんな動画とかw

拾い物をつなぎ合わせたものですが
各地の観光協会や資料館・博物館だけで上映されているとか、
或いは御当地ARアプリを使ってのみ観られるような城郭映像です。
【熊本城〜犬山城〜岐阜城〜仙台城〜肥前名護屋城〜江戸城】

…やっぱり「ARアプリがないと観られない」ってのはムカつく(愚痴)

倉庫に眠っている資料本とかも、在庫処分ついででも良いからこういう場に出してくれると嬉しいですしねぇ(爆)



他にも思いつくアイデアはいくつかあるんですが、あまり現実性のないものなんでそれは割愛。
@に関しても“場所食うんじゃない?”とは思うんですが、そこはせっかくパシフィコ使うんだから
それくらいは可能でしょ?(と言うか、これくらいせにゃパシフィコの持ち腐れだよw)
お城EXPO“2016”と題して行われたイベントなんだから、きっと“2017”“2018”…と続かせるつもりなんでしょうし
毎年毎年の「新たな情報」を提供しないと、お客さんに「どうせ去年と同じじゃん」と飽きられちゃうんじゃなかろうか?
そういう意味でも、その年その時の最新情報を発表するようなブースが絶対に必要だと考えるんですけどねぇ。
ちなみに、各自治体の観光紹介ブースの中で、オイラが個人的に一番良かったと思えたのは横浜市のブース。
開催地自治体なんで、半ば強制的に参加させられて準備も満足に出来なかったように推察されましたが
出していたネタは、横浜市内の中世城郭に関する発掘調査結果とか、地元密着愛に溢れた
イベント紹介と言ったもの。「世界遺産」や「国宝」それに「萌え武将」とかをウリにして、如何にも“手慣れた”
観光紹介をしていた他市町村のブースとは全然違い、手作り感満載という感じのコーナーでしたが
むしろその方が「真面目にお城の話をします!」という風に見えて、ヒジョーに好感度が高かったと思いますよー!
これを発展拡張してくれれば、必然的に発掘調査や現地の現状を解説する(つまり現説紹介的な)
場になるんじゃないでしょうかねぇ?どうでしょうか??
横浜市ブース
←その「横浜市ブース」。“小机城址まつり”ですって!
配布されていたパンフも、観光案内的なものは殆どなく
(横浜と言えば港町や中華街とか山ほど観光地があるのに…)
篠原城や小机城、茅ヶ崎城と言った中世城郭の縄張図や発掘調査レポばかり。
これだよ、俺が見たかったのはこれなんだよっ !!!!!
城マニアとしては、むしろグッと心を鷲掴みにされましたよー! (><)




まぁ所詮は個人的な感想ですから、ここでいくら書き連ねても詮無い事かもしれませんが
お城EXPO主催者側のどなたかがこれを見て何かしらアクションして下さる事を、僅かばかり期待してみます(苦笑)


最後に、お城EXPOで撮った写真の中で一番良く撮れたと思われるものを掲載↓
安土城ジオラマ
安土城のジオラマ模型を、何となく“それっぽく”撮ってみました。
色々と展示ネタに文句をつけましたが、勿論こういうのも嫌いじゃないという事ですからねー!
(と、最後の最後にちょっとだけフォローしてみたりして)←言い訳www


(2017年1月31日 校了)




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