1998年6月 中部地方大周回(6)

さてさて、昨日の無理な強行軍に続き
今日もまた移動に難儀しそうな予定の6日目。
いやはや、どうなる事やら…ってそれを楽しんでいるんだけど (^^;

和倉温泉のある七尾市といえば、かつての能登国における中心地。
政治・経済・文化が集約する地で、当然ながら能登の首府であった。
戦国時代、前田利家が能登国を治めた時期において
七尾の町の防備を固めるために数多くの寺院が建立される。
これらの寺群は、戦の時に小城郭として機能するように建てられたもので
今でも七尾市の市街地を取り囲むように残されている。
今日の旅路の手始めに、その中の一つ円通山恵眼寺(えげんじ)を訪れてみた。
古くは海前山宗円寺と称した曹洞宗の古刹で、地蔵尊を祭る由緒から
禅宗では通常行われない祈祷を執り行うという。
上杉謙信が七尾城を攻撃した際、この寺も焼失してしまったが
上記の通り、前田利家の治世において再興され
七尾の町を守る陣地としての役割も与えられたお寺だ。
七尾には24ヶ所地蔵尊札所があり、その第3番目の順位となっている。

で、続いて訪れたのはもちろん七尾城址。
戦国時代、七尾の町を治めるために畠山氏が拠点とした山城で、
全国でも屈指の名城と謳われる堅城だ。
一説には、七つの尾根にまたがる山に築いた城ゆえに七尾城の名が付き、
そこから七尾という町の名になったという。
とにかく、七つの尾根に広がる城とあれば
それだけで巨大な城郭という事が想像できるというもの。
胸躍らせながら城へと近づけば、いやぁ、噂に違わぬ名城でありますな。
整然と並べられた石垣は山肌を覆うようにそそり立ち、
本丸の跡に登れば…七尾の町や能登島を遥かに望む絶景が広がります!
国の史跡に指定されているため、史跡公園としての整備状態も良く
こりゃもう城郭初心者にもオススメです。

天下の名城を踏みしめた感動に満足し、七尾の町を後にする。
拙者の愛馬・光冠号は国道160号線に入り、能登半島の付け根を目指した。
向かうは富山方面、いよいよ能登ともお別れだ。
石川県から富山県へと県境を跨ぎ、氷見市内の道を南下し
富山湾の穏やかな海を眺めつつ、快適なドライブが続く。
冬の晴れた日なら富山湾を越えて立山の山並みが見えるという絶景ポイントだが
さすがに6月ではいくら快晴と言えどそうはいかない。
まぁ、そりゃ当たり前だわなと思いつつ、車は高岡市に突入。
予定ならここで国道8号線に乗り、富山市へと向かうのだが
いや待てよ、確か高岡にも城があったはず…と思い直し
急遽ルート変更。高岡古城公園を目指した。
複雑な高岡市内の街路に迷ってしまったが、程無く古城公園に到着。
ここは前田利長の隠居城として建てられた高岡城の跡だ。
わずか数年しか使われなかった短命な城郭であるが、
それ故、城跡はほぼ全体が残されており現在は都市公園として整備されている。
濠や土塁、土橋などが現存し、公園内には体育館や図書館といった文教施設が並ぶ。
城マニア的には、越中の隠れた名城と言えるでござるな。

さて高岡の城を見回ったので、ようやく予定に復帰し富山市を目指す。
車は高岡市を離れ、国道8号線に合流。一路東へ向かった…のだが
能登の道とは大違いの大渋滞!高岡から富山までせいぜい15km程度なのだが
車の波に揉まれる事1時間を過ぎてもまだ着かない。
これじゃまた時間に追われるじゃないかと辟易した頃、ようやく神通川の橋を渡り
富山市街地へと入った。富山の目的地はもちろんお城。
ところが、碁盤の目になっている富山市内の道はところどころに一方通行路があり
どこを曲がれば城へたどり着くかが良く分からない。
斯くして、さらに時間を食うハメになりつつ、やっとの事で市営駐車場に到着。
富山城を眺める事ができました。
時刻は既に午後2時近く。まだ昼飯も食べてないのに。
あぁ、随分と長い道のりだった… (T∇T)

仕方がないので富山城は簡単に切り上げて(再建城郭だしね)
次なる目的地へと向かう。上高地・白川郷と並んで今回の旅の目玉になる
称名(しょうみょう)滝を拝みに行くのである。
富山市から富山県道43号線に乗り、車は一路立山方面へ。
下田の交差点で右に曲がり、今度は県道6号線に入ってなお進めば
次第に辺りの風景は田園地帯から山岳地へと変化していく。
いよいよ日本有数の秘境、立山連峰が近づいてきた証拠だ。
富山地方鉄道立山線と並走しつつ、ぐんぐんと高度を上げていく道は
所々工事中で通行に難儀しつつも、立山有料道路との分岐点までやってきた。
立山有料道路はバス専用の観光道路で、この先には有名な黒部ダムが待っている。
光冠号と一緒に走っていた観光バスが、ちょうどこの道に入っていく所であった。
こちらは自家用車なので立山有料道路には入らず、
そのまま県道6号を直進。バスとは別れ、ひとり称名滝を目指す事になった。

突然だが、かすこばはかなりの確率で晴男である。
今回の旅行も、6月の梅雨時だというのに雨が降ったのは小松近辺の僅か数時間だけ。
しかもほとんどの場所が、かすこばが来訪した翌日から雨になっている。
拙者にとっては、かなりお天気に恵まれた旅行なのである。
が、それはまだ序の口。この称名滝でこそ晴男の真価を発揮する時がやってきた。
県道6号線は称名滝の手前1kmほどの所で終点となっており、
ここから先は徒歩で進まねばならない。かすこばも車を下り、
称名滝への遊歩道を登り始めた。ところが、滝から帰ってくる観光客の顔は
残念無念といった表情ばかり。どうやら、霧が濃くかかって全然滝が見えないらしい。
参ったなぁ、ここまで来て見られないんじゃ何のために走ってきたのか…と思いつつ
それでもせめて近づける所までは行ってやろうと覚悟を決め
結構急な上り坂の遊歩道を歩く。確かに、道の先は濃霧がかかって真っ白け。
やれやれ、無駄骨か?と半分諦めたその刹那、だんだんと白さが和らいで来る。
おや?これは?と更に歩を進める毎に、霧が晴れてくるではないか!
称名滝を望む観瀑台に着いた時、霧は完全に消え去って
写真撮影には絶好のタイミングになっていた。
話はそれだけに終わらない。拙者が写真を撮り終え、滝を十分に眺め
さて帰ろうかと後ろを振り向いた頃、再び霧がかかり始めた。
かすこばが滝から遠ざかるにつれ、霧は濃さを増し
あたりはまたもや白濁の世界へ逆戻り…。
拙者が見たいと思った時だけ霧が晴れるとは、我ながら恐るべき晴男ぶり!!
国名勝・天然記念物 称名滝
国名勝・天然記念物 称名滝

落差350m、東京タワーよりも高い滝にござれば
もちろん、日本一高い滝であります。
だからどうしても見たかったのよ、この滝 (^-^)
「称名」というのは僧侶が経文を唱える様子の事で
荘厳で、音が鳴っているはずなのに
静けさをたたえた有様を表す言葉。
その名の通り、日本一の瀑布なのに
轟音は一切せず、ただただ静寂に尽くされた場所でした。

称名滝へと向かう往路は地図とにらめっこしつつ、
急激な上り坂にアクセルを吹かしっ放しだったので周りの景色を眺める余裕がなかったが
下り坂になる復路は称名川の流れに沿って走るだけだったので
称名谷の展望を眺めつつの運転。帰り道でようやく気がついたのだが
この称名谷、すさまじいまでの絶壁になっている。
まるで谷の左右の壁が垂直に切り立っている感じで、両側から挟まれそうな雰囲気。
地形的に考えて、この絶壁は高さ500mくらいあるって事だよねぇ?
元々は火山である立山の造山活動と、称名川の雪渓浸食によってできた地形だそうで
その名も悪城壁という恐ろしげな場所なんだそうな。
誰が考えたかこの名前、言い得て妙ですなぁ。
富山県名勝・天然記念物 悪城壁
富山県名勝・天然記念物 悪城壁

写真だとスケール感が分からないんですが
めっっっちゃ大きな絶壁なんですよ、これ。
称名滝同様、東京タワーがすっぽり納まる高さです。
あ、逆光気味なんで霞んで見える… (^^ゞ

立山の山並みを後にして、車は再び富山平野へと戻ってきた。
今日のお宿は朝日町に予約してある。新潟県との県境にある町だ。
近くには有名な温泉地である宇奈月温泉もあり、
そっちに宿泊するのもアリかなー、と思ったのだが
宇奈月に行くまで、いったん幹線道路を外れて山に入り、
帰りはまたその道をわざわざ戻らねばならない面倒さがあったので
朝日町に宿を決めたというワケ。面倒ついで(?)に
立山から北陸自動車道に乗り、朝日町まで一気に移動してしまった。
一般道路を走って途中の観光地を見ようかとも思ったのだが
この旅行中、毎日時間に追われ、宿に着くのが大幅に遅れまくっていたので
少しは「宿に早く着いてしまった」という日があってもいいかな、と考えた次第。
立山ICから高速で20分ほどで朝日ICに到着。
宿はヒスイ海岸のそばにある境温泉の民宿だ。

…で、案の定早く宿に着いちゃったわけでして。
さすがに早すぎたかな?まだ日も高いし。
これだったらもう少し観光すれば良かったかな?
魚津にゃ城があったし、ホタルイカが名物だったし…と悩んだが
まぁ着いちゃったものは仕方がない。
今から引き返すのも何だし、せめて目の前のヒスイ海岸を散歩しよう。
ってな感じで、宿からフラフラと(これじゃ怪しいか)出かけ
玉石の浜になっているヒスイ海岸を見て歩きました。
その名の通り、この海岸の石には翡翠が混じっているんだそうな。
そうは言っても、素人目にはどの石が翡翠かなんてわかんないけどね (^^;
とりあえず、目の前に大きく広がる日本海の海原は
翡翠に負けず劣らず綺麗でしたよ♪
さぁーて、明日はいよいよ新潟攻めだぁ!



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