2000年11月 北陸再訪(2)

千里浜で迎えた2日目の朝。
今日こそは寝坊せずに(笑)きちんと観光しないとね。
昨日は朝方雨が降っていてあいにくのお天気だったけど
今朝は薄明かりが差し込むまぁまぁの日和。
晩秋の観光には程よい気候と言ったところかな?
ってなワケで、朝食を摂って早々に出陣。
本日は能登半島をぐるりと一周するコースです。
まず初めに伺ったのは能登国一宮の気多大社。
千里浜国民休暇村のすぐ近くにある大きな神社です。
朱に塗らず、白木の肌がむき出しになっている鳥居は風格満点。
早朝の境内はまだ誰も居らず、巫女さんが掃除しているだけでした。
季節柄、七五三のお参りに訪れる方が多いようで
その案内札がそこかしこにあるのですが、
しかし一番乗りでやって来てひと気のない境内を見て回るのは
何だかこの大きな神社を独り占めしているような気分で満足ですな。
秋らしく、菊花の展示もやっておりました。
早朝の気多大社
早朝の気多大社

参拝客はまだ誰もいない中、赤と白の
鮮やかな衣装を身にまとった巫女さんが
おごそかに歩いていきました。
気多大社の各建造物は国の重文、
社叢(しゃそう)は天然記念物だそうです。

続いて赴いたのは妙成(みょうじょう)寺。
こちらも気多大社から少ししか離れていない所にあり
移動には全然時間がかかりませんでした。
以前の能登旅行では夕暮れ間際の時間切れで訪れた古刹でしたが
今回、もう一度きちんと見てみたいと思ってやって来ました。
重要文化財が立ち並ぶ境内、これまたまだ観光客が来る前の時間だったので
思う存分に独り占め!とは言え、このお寺の境内は広うござるな。
建物も色々ありまして、ゆっくり見ているとあっという間に時間が過ぎ去ります。
あまりのんびりしちゃいられないぞ、と気をつけつつも
結局、一通り見終わる頃には1時間半くらいかかってました (^^;

さて、秋の能登路は風も穏やか。次第に晴れ間も見えるようになり
絶好のドライブ日和だね。のどかな道を気分良く走り抜けると
富来(とぎ)町に差し掛かりました。ここは能登金剛と総称される
能登半島西岸各地の名勝の中でも随一有名な巌門のある町です。
当然、オイラもその巌門を見に立ち寄ります。
国道249号線から左に逸れ、福浦港の小さな集落に入りました。
で、ここには現存木造燈台としては日本最古のものとされる福浦燈台があります。
そういう名所があると聞いたら見ずにはいられないかすこば。
早速、車を向かわせて見学いたします。
ほほぅ、これが福浦燈台ね。かなり小さいですねー。
やはり木造燈台、それも1876年(明治9年)に造られたものなので
現在の燈台とは全然趣が違います。今は現役を離れて文化財になってますが
この燈台が使われていた当時はこれでも立派に役立っていたと聞きますから
別に近代的な建築じゃなくても十分なんだろうねぇ。
兎にも角にもこの小さな燈台の姿は一見の価値がありますな。
福浦燈台
福浦燈台

青い空に映える小さな白い灯台。
札幌時計台を髣髴とさせる明治擬洋風建築ですが
屋根は日本古風の瓦葺という和洋折衷形式。
実際に目にすると、なかなか可愛らしかったりもします。
さて、今度こそ能登金剛めぐり。海に“置かれた”ような鷹ノ巣岩を見た後
いよいよ巌門へ向かいます。確かに門とは良く言ったもので、
海に突き出した岩山の下、波が洗う部分にちょうどくり貫かれたような穴があり
さしづめ、波の通り道を決める門のようです。
見事な自然の造形美を堪能し、車を北上させれば
今度は能登金剛北辺の名所・ヤセの断崖が近づいてきました。
これまた脇道に入ってその姿を拝見。日本海の荒波が白く打ちつけるその断崖は
何とも言えず侘びしく、物悲しく、北の海の厳しさを見せつけてくれます。
さっきの福浦燈台はどこかメルヘンチックな可愛さがあったけど
こちらヤセの断崖は荒々しく荒涼とした雰囲気。
能登半島は場所ごとに色々な表情を見せてくれます。

石川県道7号線に進み、小又交差点で県道1号線へ左折。
この道はのと鉄道輪島線と併走する道です。
現在は廃止されてしまった輪島線ですが、この頃はまだ現役の路線でした。
途中、立ち寄った能登三井(みい)駅はいかにもローカルな“村の駅”といった感じ。
その先、輪島の駅は路線の終着駅で、ホーム終端は行き止まり。
当然、駅名のプレートに隣駅の表示は無いのですが
誰が書いたか「シベリア」の落書きが…。
能登半島の先、日本海の向こうに繋がるのは確かにシベリアですな。
その昔は輪島からシベリアへ運行された連絡船もあったとかなかったとか。
今は亡きのと鉄道の旅、なかなか趣があります。
こういう田舎の路線が消えるのは致し方無いとは言え、誠に残念なり…。
のと鉄道 輪島駅
のと鉄道 輪島駅

ホームの先は行き止まり。
それでも、駅名表示にはその先の駅が
(写真ではわかりにくいですが)
「シベリア」と書かれています。
落書きとは言え、センスと郷愁に富んでいますな。
今ではもう廃線となってしまった旧駅の一コマです。
輪島に着いたのはお昼頃。
名物の朝市はすっかり終わっていたので、特に市内で見るものもなく
次の目的地、能登半島突端方面へと車を急がせた。
その途中、国道249号線沿いに見つかるのが白米(しらよね)の千枚田。
前に能登へ来たときも立ち寄りましたが、ここは何度見ても見事な風景。
これだけの棚田をいくつも開墾し、稲作するのは大変だろうなというのが
見て取れます。さらに先へと進むと、曽々木海岸から少しだけ山へ入った所に
旧家がそのまま保全されている時国(ときくに)家がありまして、
こちらへ立ち寄る事にしました。時国家は平安時代末期、源平合戦に敗れた
平時忠なる武将がここへ落ち延び、その子・平時国は源氏の追及を逃れるため
平姓を棄て、時国の名を家名として帰農した事に始まる家なのであります。
時は流れ、時国の家は上家と下家に分かれ上時国家・下時国家の2家となり
その両家が現在、古民家を観光開放しているのでござる。
前回の能登周遊ではやはり駆け足で見ただけだったので
今回はじっっっくりと拝観。豪農の古民家とあって、
豪華な襖絵や昔使われていた駕籠などがずらりと並び
さながら江戸時代にでもタイムスリップしたような感じでした。
いやー、こういう展示はやっぱり時間をかけて見ないといけないねぇ(当然だ!)

国道249号線から離れて県道28号線へ。この道は能登半島北端へと続く道です。
椿崎展望台から後ろを振り返れば、冬近い日本海の姿が一望できます。
もっと奥まで進めば、そこは半島最北端の禄剛崎、
まだまだ進むと、今度は半島最東端の長手崎。
椿崎に禄剛崎に長手崎、能登路の岬を3つ辿り
半島を折り返した所にあるのが、のと鉄道能登線終点の蛸島駅。
これまた今では廃線になってしまった路線ですが
当時は1日数本の列車が行き交っていた鉄路です。
蛸島駅も終端は行き止まり。とは言え、この駅は小さな駅なので
列車運行の拠点になっていたのは2つ手前の珠洲駅でありました。
こちら珠洲駅は車両基地の建物が並ぶターミナル駅で
能登半島北部を観光するための中心地でもありました。
まぁ、こんな話ももう過去の事なんですよね。
こういう田舎の路線が消えるのは致し方無いとは言え、つくづく残念なり…。

小泊灯台
小泊灯台

福浦燈台同様に小さな灯台ですが、
こちらは今でも稼動しているものです。
この灯台が守る能登半島最東端、
長手崎から広がる光景は
少し物悲しい大海原でした。

で、はるばる能登半島の一番奥までやってきたのには理由がありまして
もうお察しの事とは思いますが…お城です (^^;
悲恋の物語で有名な恋路海岸に沿ったのと鉄道松波駅のすぐ裏手が
松波城跡公園として一般開放されているのであります。
で、さっそく攻略に取り掛かりますれば、これがなかなか玄人好みな城跡(爆)
フツーの人には何だか良くわからないかもしれませんが、
それとない土塁の痕跡や石垣の跡があるのはもちろん、
かつて庭園があったとされる所に間違いなく山水池が発掘され、
綺麗に整備されて再現されているのであります。
おー、これって結構凄いぞ。
庭園跡に池がきちんと残っているってのは、
越前一乗谷の朝倉氏居館跡くらいだもんなぁ。
って事は、国指定史跡とタメを張れるほどの城跡って事か?
まぁ、そこまで言うと言いすぎですけど
城マニアが見れば「なかなか良いぞ」と思える城跡公園でした。
(一般の方が見ると何の変哲もないタダの公園なんでしょうけど…)

能登路の岬めぐり、そしてお目当ての城跡攻略を終えて満足した拙者は
七尾市方面に向けて車を走らせました。一応、予定していた観光場所は
平らげたので、あとは能登島を周遊しようと思ったのね。
国道249号線を南下し、快適に走行していると
道端に一瞬「…城跡」の標識が過ぎ去りました。
いや、標識なんて立派なもんでなくて立て札だね。
えっ!っと一瞬慌て、大急ぎで停車させ確認すれば
道脇の田んぼの向こうの山が末次城跡なんだそうな。
予定外にたまたま行き会っただけとは言え、
城跡となれば黙っちゃいられない。
車を往来の邪魔にならない位置に駐車し、すぐさま田んぼを突っ切って
城山にかじりつく。と言っても、どこが登城口なのかよくわからない…。
えぇい、どうにでもなれと何となく登れそうな所から分け入り
ガシガシ登っていくと、斜面を切り開いたような地形の前に
「ますがたたてぼり」の標識が置かれていました。
枡形+竪堀というのは城郭の説明として意味不明なんですが、
とりあえず、標識があるんだから城跡に間違いはなさそうだね。
その後も悩みつつ山の上へと登っていくと
5分程度で山頂に到着。本丸跡らしきこの場所には
「末次城址」の石碑がありまして、周りを眺めれば
西側の展望が良く拓けております。
なるほど、こりゃ西から来るであろう敵軍を監視するには
うってつけの城だわな、と認識し納得した次第。
で…駐車している車が気がかりなので慌てて下山しました (^^;

さて、国道249号線をひた走る能登路のドライブも終盤。
穴水町を抜け、七尾北湾を左手に眺めつつ進み
能登島の傍までやってまいりました。能登半島の真ん中、
七尾湾を埋めるようにある能登島は近年橋が整備され
西側からも車で渡れるようになりました。
今回の旅では能登島へ渡ってみようと思っていた拙者は
その新しくできた西側の橋から上陸を試みます。
三ヶ口瀬戸と呼ばれる海峡を渡る橋は広域農道として設けられているので
通行料金もかからず渡る事ができます。それでいて新鋭の橋ですから
これがまぁ立派な事!まるで横浜ベイブ○ッジを思わせる斜張橋なので
ホントにこれ、タダで渡っていいの?この先に料金所あるんじゃないの?と
思わず心配になってしまうのは…単にオイラが貧乏性なだけですかねぇ(ォィォィ)

能登島に上陸し、ぐるりと島を回るコースを走るかすこば。
その途中、立ち寄ったのが能登島ガラス美術館。
拙者の知り合いが勤めていたものでして、
美術館を見ると言うよりはその人に会いに言ったような感じだったのですが
ともあれ、なかなか面白い所でしたね。
色々なガラス工芸が展示されているのは勿論、
美術館の建物自体が前衛芸術のような(?)不可思議な形。
その前庭からは七尾湾の海原が展望できますし
今では「道の駅・のとじま」が併設されているようですね。
能登島ドライブの折には気軽に立ち寄れる観光スポットでございます♪
能登島ガラス美術館
能登島ガラス美術館

外観はサイバーティックなような、
逆に1960年代を思わせるような、
何とも芸術的に爆発しているデザイン(笑)
しかも館内の展示はどれも美しく、
色々と楽しめるようになっている美術館です。

能登島の南端、屏風瀬戸と呼ばれる海峡を渡る能登島大橋から
再び本土へと戻った拙者は、そのまま和倉温泉街を通過し
七尾市中心部へ。で、昨日通ったのと同じルートを使って
宿泊先の能登千里浜国民休暇村へ帰着。
昨日今日とで念願の能登半島一周を成し遂げて満足しました。
これで心置きなく茅ヶ崎に帰れます…ってまだ旅行途中やねん!
明日は若狭湾方面へ出陣じゃ〜 !!




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