1998年10月 南東北縦断(2)

昨日はすっかり日が暮れてから訪れた釜房湖。
夜が明けてから改めて見直すと、結構大きな湖です。
しかも、湖を渡る国道286号線は仙台市内から山形市方面へ直結する幹線なので
山中ののどかな湖なのに大型トラックやら何やら、かなり頻繁に走って行きます。
幸いにして拙者の宿は国道を対岸に見る位置なので、
騒音などに悩まされる事はなく、むしろ見物気分で眺められました。
さて今日はまず仙台市内へ。仙台の太守・伊達家関連の名所巡りから始まります。

杜の都・仙台といえば青葉城、正しくは仙台城ですやね。
江戸時代の大藩、伊達家62万石の本拠となる大城郭です。
もちろん、築城者は瑞巌寺でも登場した独眼竜・伊達政宗。
城跡にはその政宗公の騎馬像がそびえ立ち、仙台の町を見守っています。
広瀬川の急流を天然の水濠とし、断崖絶壁の上に築かれた山城は
大都市経営の拠点となる近世城郭としては異例のもの。
さすが政宗公、やる事が凡人とは違いますな。
明治維新後に城は破却され、最後に残った二ノ丸大手門と隅櫓も
太平洋戦争の空襲で惜しくも焼失してしまったものの、
隅櫓は再建され、城跡自体も史跡として整備が進められている上、
何といっても山城ならではの眺望は見事。
仙台の町をはるかな高みから見下ろす事ができます。

仙台城の城山から下山した後、次に向かったのは青葉山の麓、
仙台藩草創期の君主3代を祭った伊達家廟所。
これまた太平洋戦争の空襲で焼かれてしまったものでしたが
近年に再建され、桃山文化を忠実に再現している霊廟です。
本来はお墓であるものですが、まるでお祭りの祭神であるかのような
きらびやかで華やかな建物が3棟立ち並んでいます。
伊達藩祖である名君・政宗公の廟所、瑞鳳殿(ずいほうでん)
2代藩主として偉業を継いだ忠宗公の廟所、感仙殿(かんせんでん)
豪放な快男児、これぞ伊達男という3代藩主・綱宗公の廟所、善応殿(ぜんのうでん)。
どれも金銀織り交ぜた色とりどりの装飾を施された霊屋で
思わず見とれてしまう感じ。青葉城に比べると、どうしても
知名度が低い場所ですが、なかなかオススメの観光地ですよ。
伊達家廟所 瑞鳳殿
伊達家廟所 瑞鳳殿

この中に政宗公が眠って居られます。
日光東照宮とまでは言わないものの、
それに似た感じの造形美を演出する霊屋。
どうにも桃山文化は派手ですなぁ…。
でも、黒でビシッと決めるあたりは
政宗公のセンスを感じますね。
何となく、黒漆塗五枚胴具足(政宗愛用の甲冑)を
連想させるようなデザインです。
え、そう思うのは拙者だけ? (^^;

気が付けばもうすぐお昼時。城跡に伊達家の聖地、と見学すれば
かすこば的にはどうしても時間を割いてしまいますな。
とは言え、このままでは予定が押し気味になってしまうので
仙台の町はこれで終了。山形方面への移動に取り掛かる。
青葉城を背にし、広瀬川を渡り、車は国道286号線を進み
東北道の仙台南ICと交差。なお西へと向かい、しばらく直進すると
たどり着いたのは東北の名瀑として有名な秋保大滝。
名取川の上流にある大きな滝は見事な直瀑で
思わず見とれてしまいますな。付近には秋保不動尊もあり
滝と古刹の組み合わせは情緒たっぷりでいい感じ…。
って、またのんびりしそうになってしまった!
いかんいかん。こんなんじゃ今日の宿までたどり着かん!!
風情を十分堪能した所で、車を出発させ
今度は国道48号線、仙台から天童へと抜ける幹線道路をひた走った。

作並温泉を抜けていく国道48号線は、別名作並街道。
県境の関山トンネルを抜け宮城県から山形県に入ると
関山街道と名を変えます。その関山街道の山道を下った所が
日本有数の温泉地として名高い天童の町です。
今夜の宿はこの天童温泉なのですが、その前に立ち寄る予定にしていたのが
松尾芭蕉の句で有名な立石寺、通称山寺。立石寺に行くため、
いったん天童温泉街は素通りし、山形県道24号線に入って山形市方面へ走ります。

芭蕉が「閑(しずけ)さや 岩にしみ入る 蝉の声」という唄を詠んだという山寺は
麓から見上げるような急勾配の山に、いくつもの寺堂が散在し
そこに向かって階段を一段一段踏み締めながら登って参拝する山岳霊場だ。
登山口を入ると、芭蕉と、同行の弟子・河合曽良(かわいそら)の銅像が建ち
参拝者を迎えてくれます。彼らに見送られ、山道を登っていけば
山門、姥堂、仁王門、納経堂、開山堂、五大堂と建物が現れます。
森の中に続く山道の参道は、勾配がきついのはさる事ながら
見通しが利かない上に時折狭く折れ曲がるため、
下山する人とのすれ違いが厳しいですな。
これだけ急な坂道を登ると、結構な運動になるなぁ…なんて思ったりもして。
そして頂きにあるのが奥の院こと如法堂。さすがにここまで来ると
眼下に立石寺の門前町が一望でき、開放感が抜群。
いやー、登ってきた甲斐があったというものです (^^)v
国史跡 立石寺
国史跡 立石寺

階段を登っていく度に、こうして次の建物が
ひとつひとつ見えてきます。
こちらは立石寺の仁王門の写真。
頂上付近にある五大堂の高欄からは
広大な展望が開けるのですが
その写真は敢えて掲載しません。
是非、皆様ご自身の目でご覧下さい。

山寺から降りてきた頃、ちょうど日暮れに。
薄闇がかかってきたかと思ったら、どんどん暗くなってくる!
「秋の陽は釣瓶落とし」と言うけれど、ホントに急だね。
下山したら山寺駅近辺の写真を撮るつもりだったけれど
光量の関係でほんの2〜3枚しか撮れなかったわい。
いやそれよりも、暗くなる前に下山できて良かったとすべきか?
何はともあれ、古寺の趣を堪能しまくったので
これにて本日の観光は終了。天童温泉の宿に向かいました。
天童の宿は、あの有名な旅館「王将」でござる。
普段は安宿ばかり泊まるかすこばなのですが、今回は宿泊券利用なので
こうした贅沢な宿を選択する事ができたのでありまする。
で、泊まってみるとまぁ…ホンマに贅沢やなぁ。
料理といい、部屋といい、何だか拙者のような「庶民中の庶民」には不釣合いなほど。
こんな優雅な宿泊は滅多に味わえん、と思いつつ床に就いたのでありました。
(え、皆様これくらいの宿は普通に使うものなんですか? (_ _ゞ参ったなぁ )




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