★★★相州乱波の勝手放談 ★★★
#25 《築・城・記? その5》名古屋城 天守編
 




前回までを振り返って…
子供の頃の記憶を呼び覚まし、ある日唐突に名古屋城の
プラモデルを作り始めてしまったかすこば。“大人買い”ならぬ
“大人作り”で模型工作に打ち込んだ拙者は、絶対に手抜きはせず
120%本気モードで精密模型を完成させるべく作業に打ち込む。
大変永らくお待たせしました、ようやく完成の段…になる筈です(多分w)




さてさて、前回やたら意味深なコメントで締めくくった破風制作の続きです。

今回のプラモデル制作、目標としているのは宝暦(1751年〜1763年)改修直後の
名古屋城。つまり、江戸時代中期に大規模な補修工事が行われ、
新装成ったばかり(という時点)の建築物を再現しようとしています。
屋根が銅板に改められ、破風には“ちゃん”と呼ばれる防腐剤が塗布され
そして各所の飾り金具が美しく輝いていた頃の情景を作っているのです。
つまり、破風には(現在は緑青に覆われて周囲と同化してしまっていますが)
黄金の装飾が光っていた状態。これを再現するのに、金色の塗料を塗る…

のは最初から想定していません!(キッパリ)

プラカラーのメタリック系色素って、大概は粒子状になっているので
「黄金板」を作りたいのに「金粉のカタマリ」になってしまうのがオチ。
なので、最初から塗料での金色装飾は考えていなかったのであります。
そこで、当初考えていたのは「金色の折り紙」から裏面の繊維質を漉き落とし
表面の金色セロファン部分だけを抽出、それをサイズに切り落として
破風や鯱に貼り付ける…という方法。しかしある日、雑貨屋さんで
こんな物を見つけてしまったのです!
金箔!
端切れですが、本物の 金 箔 !

これを使えば、真実の金装飾が作れる!
端切れとは言え、模型工作ならば十分な大きさ!
現実の名古屋城もウチの模型も、純金使用の真正品!(なのか?)

という事で、直感的にプラモデル用素材としてお買い上げ(笑)
斯くして、この金箔を破風の飾り金具部分に貼り付ける事になった訳ですが…
接着剤塗布後、金箔を載せ…乾燥したら、余計な部分を筆で払い落とします
いやはや、金箔の扱いって滅茶苦茶難しいっ! (><)
あまりにもフワフワ、ヒラヒラしてるのでピンセットで持ち上げただけで
シワが寄る!しかも全然上手く広がってくれない!!
よく金箔は「鼻息で飛ぶ」なんて言いますが、とんでもない!
「無風状態でも飛ぶ」ほどの扱いづらさです!!!
神経の集中度合いとしては、今までのどの作業よりも
ハイレベルなものになりました。彫金師とか象嵌師とか
伝統工芸の職人さんって、これを軽々と狙い通りの場所に据えてますが
端切れじゃなくて巨大な(←大袈裟ではなく、本当にそう思える)1枚のまま
あんなに上手く操るなんて、まさしく神業だと恐れ入りました m(_ _)m
金箔恐るべし…。
全部貼り付けると、こうなりました唐破風も綺麗にしてあります!
色々と苦労しつつ、それでも何とか金箔を貼り付け。
軒唐破風も同様に貼り付けました。でもキビシー! (TヘT)
屋根部品の総仕上げ
何はともあれ、屋根部品の下拵えはこれで終了。
軒の反り上がり部分も細かい装飾を
再現した塗装にしてあります。この塗装も
色々悩んだ末の結果なんですが、金箔貼るより
遥かに楽だと思えるのは何故だろう… (^ ^;
表側で勢揃い

その後は屋根パーツに破風パーツを組み込む事になります。
屋根の軒裏から破風を差し込むんですが、結果として
微妙な隙間が発生したり、軒の垂木模様が破風パーツには出ないので
これも修正しないと、気が済まない!
またもやボンドの登場仕上がりはこのやうに
という事で、破風を差し込んだ場所に、またもや木工用ボンドで
隙間を埋め、さらに垂木模様も造成! その上からつや消し白で塗り上げ
パっと見では、破風パーツの接合部分が目立たないように仕上げました。
まぁ、どうせ建物の裏側になる場所なんで
屈折鏡でも持ち込まない限り、わざわざそこを見るような事はないんですが(爆)


さぁいよいよ!と言うかようやく!天守を組み上げていきます!
大天守各階の仮組小天守の仮組大小天守、仮組の様子
ぶっちゃけた話、ここまでやってあれば後は本当に1層目から5層目までを
積み上げて終わる筈なんですが、前々にも云った通り、ただ組み上げただけだと
外側から窓を覗き込んで、中がスカスカなのが見劣りしてしまう。
という事で、スカスカにならないようにする為、何か手立てが必要なんですわな。
窓の向こう側…
例えばこんな感じ。わざと裏側から
ライトで照らしてありますが
実はこれ、小天守2階の窓から
「1階の」裏の窓が筒抜けな様子でして
単に反対側というだけでなく
上下階もすっぽ抜けな訳です。
中身が無いんじゃダメという事なら…中身を作れば良いって事だね!
ですので、バッチリ中身を作ります!!(え?)
床材づくり
填め込むとこう
名古屋城は戦災前の建築が実測されており、
その「昭和実測図」は公式HPで閲覧できます。
そこで、その実測図通りに床材と柱を組み上げ
大小天守の内側に仕込みます。つまり、
この模型は外側(見た目)だけでなく
内側も古建築と同じ構造になるのです!
実測図通りに作った小天守の1階・2階内部構造
こうすれば、上下階の筒抜けどころか
同一階の向こう側とて、間に柱が
現物通りに建ち並ぶので、無駄に
マヌケな空間が広がる事はありません。

ちなみに、床材に使ったこのボール紙
どこから持ってきたかと言うと…
官製ハガキの保護材(爆)
職場で山ほど余るので、リサイクルしました (^^;

大天守の場合、1階2階が同一平面なので柱を貫通させます各階で組み合わせた様子内部構造だけで組み立てると
石落とし周辺の調整
大天守の場合、内部構造は勿論の事、
組み上げた際、石落とし周辺に
隙間が出来てしまうので
(石落としの壁面が2層目と3層目に分断されている為)
それを一体化させる調整も同時進行。

蛇足ながら、破風の窓も塞ぎ、反対側が
透過されてしまうのを防いでいますが
この戸板も、破風や銅瓦屋根とは
微妙に違う色彩にして変化を付けました。



これで鯱を載せれば目出度く完成―――?
ほぼ出来上がったように見えますが…?実物では見られないアングルw
いえ、まだですっ!!!


宝暦改修によって、名古屋城の大小天守には屋根からの雨樋が
設置されました。この雨樋、現在の再建天守でも通じているので
すっかり「昭和に増設されたもの」と思われてしまっている物ですが
いやいや、由緒正しい旧来からの構造物。となれば、この雨樋も
きっちり作り上げねばなりますまい!斯くして、例の如くプラ板を
切断して組み立て。それに色を塗って、天守の壁面に這わせます。
雨樋の設置
こんな感じで、雨樋を設置。
当然、現物と同じ位置に通しています。
これも屋根とは少しだけ違う色を調合し
微妙に雰囲気を変えています。

最初は屋根部品のランナーを引き伸ばして
雨樋に加工しようと思ったんですけど、
これがなかなか上手くいかないので
プラ板を樋管状に成型する方法へと変更。
最初っからそうすれば良かった… (^ ^;;;



最後に制作するのは、樹木です。城に植栽される木と云えば
公園化された現代では、広葉樹(特に桜とか観賞用のもの)もありますが
当時は落葉するものを避ける傾向にあった為、常緑針葉樹が基本。
(葉が“落ちる”のは縁起が悪い、外から城内を看過されるのを防ぐ、等々の理由)
特に建材や燃料、食用にも転用できる松が最もスタンダードな物でした。
ですので、当然ここで作るのは松の木です。加えて、名古屋城の雅名として
用いられるのが「楊柳城(柳ノ丸)」である事に因んで、柳の木も制作。
針金モンスター(笑)色を塗って
模型に添付している樹木のパーツもあるんですが、これはまるっきり「オモチャ」なんで
一から作ります。まずはニクロム線(窓の格子に使ったやつ)の残りを束ね、
幹や枝の形を整えます。これを見ただけでは、とても樹木とは思えないので
嫁さん曰く「針金モンスター」だそうな(苦笑)
で、そのモンスターくんに木工用ボンドを塗りたくり(またボンドだw)
乾燥したら樹皮の色を着色。この形で…多少は「木っぽく」なったかな?
柳の木も
同じようにして、松の木をもう1本と
柳の木を2本調製。で、松は針葉樹なので
フワフワの葉を作る訳ではない為
繊維状のターフを買ってきました。
これを細かく裁断し、木の幹に
貼り付けていきます。柳の葉も
その裁断した細かいターフを
長いままのターフに絡み付けて接着し
枝から垂れ下がる情景を作り出します。
ターフを用意
松の木はこのように
柳の葉です
完成した樹木
葉の伸びる方向を揃えて
ちゃんと松っぽく、
柳っぽく見えるよう
調整するのがまた
ひと苦労でしたw



植樹前こんな感じで植樹!植樹後
全景

これで大小天守に鯱を揚げれ…あれ、もう紙面が(爆)
という事で、完成した写真は次の頁にお出しします(ここまで来てまだ引っ張るの?w)




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