★★★相州乱波の勝手放談 ★★★
#23 《築・城・記? その3》名古屋城 建物編
 




前回までのおさらい♪
子供の頃の記憶を呼び覚まし、ある日唐突に名古屋城の
プラモデルを作り始めてしまったかすこば。“大人買い”ならぬ
“大人作り”で模型工作に打ち込んだ拙者は、絶対に手抜きはせず
120%本気モードで精密模型を完成させるべく作業に打ち込む。
「こいつバカじゃないの?」という凝り性で、作業は遅れに遅れ…(自爆)




では橋台制作の続きから… (^-^)

名古屋城天守の橋台、西側壁面の堀に沿った側だけ
屋根の庇に大量の鉄串が突き出しております。いわゆる
「忍び返し」の目的で作られた剣塀(つるぎべい)ですが
やはりこれも再現しないと、納得できません!
しかしプラモデルのキットではそんな細かいモノまで
部品になっている訳はなく…やはり工夫して自作するのみ(苦笑)
名古屋城天守橋台の剣塀
このように、屋根の庇に大量の
鉄串(槍の穂先)が整然と並びます。
石垣をよじ登り、壁を乗り越えようと
侵入者がやって来ても、それ以上
進めなくする為の構造物です。
鉄串が鉄櫛のように(いや、駄洒落じゃなくて)並ぶ構造を再現するに
製作開始当初から考えていたのが「ホッチキス(ステープラー)の針を使う」方法。
以下、写真を交えてご説明していきます。
剣塀作業工程1
まず始めに、「コ」の字形をした
針の断面の中心部にだけテープを
貼り付けて固定します。この後
両脇をほぐすので、それにより
全部がバラバラになってしまうのを
防ぐ為です。
ホッチキスの針って結構しっかり
一体化するよう固まっているので
かなり力を入れて、1本1本をバラします。
先にテープで止めたのは、力を入れると
今度はすぐに分断してしまうから。
剣塀作業工程2
剣塀作業工程3
バラした両脇の針を、1本おきに
刎ねていきます。これで櫛のような
構造を作り上げる事が出来るという訳。
こうして作った鉄櫛を
屋根パーツの軒裏に貼り付け。
と言っても、これが実は難題で
等間隔を維持したまま、適正サイズに
切り分けるのが至難の業だったので!
この状態に整えるまで、何度も
試行錯誤を繰り返しました (x x)
剣塀作業工程4
剣塀作業工程5
で、出来上がった屋根パーツ。
これを橋台の上に固定すれば完成です。
しかしこれも結構悩ましい話で
鉄櫛を挟み込んだ分、壁パーツと
屋根パーツの噛み合わせにズレが。
ミリ単位どころか、それ以下のレベルで
これまた調整を繰り返しました。



不開(あかず)門の屋根も同じく剣塀。
こちらも順を追ってご説明いたします。
不開門作業工程1不開門作業工程2
不開門を元々のパーツ通りに作ったところ(左)ですが、
橋台と同様に、控え柱が無いので自作して追加(右)
不開門古写真不開門作業工程3
壁面にも控え柱がありました(左・古写真)ので、同様に再現!(右)
この柱は石柱だったので、塗色もちゃんとそれに合わせてあります。
不開門作業工程4
その上に、橋台と同じように
鉄櫛を貼り付けた屋根パーツを。
ちなみに、橋台の後から作った
鉄櫛なので、馴れたせいか
完成度は断然こっちの方が上(爆)



さて、橋台にせよ不開門にせよ、ここまで“建てた”のは
概ね「壁」だけ(苦笑) 櫓や天守と言った、立体構造物は
これから組み立てていく訳ですが、それに先立って下拵えを。
(この下拵えがまた時間のかかる作業でして…www)
つや消し白色色の差が重要
まず白壁をきちんとつや消しの白色で塗装。もともと白色のプラスチックですが
きちんと「つや消し」の処理をする事で、漆喰壁の風合いが全然違ってきます。
これは基本中の基本なので、当たり前の作業ですが…
小天守内部古写真マホガニー
内壁は木目そのままだった(左・古写真)のを再現すべく塗色(右)
お城のプラモって、完成時に窓から中が丸見えになるので
白壁(白色パーツで放置)のままにしておくと、実はすごく目立つ。
ちょっとこだわる人だと、こういう塗装もしておくでしょう。

で、普通ならこれで十分組み立て始めるレベルなんでしょうが…。
過去の模型製作経験と照らし合わせて、どーにも気になるのが
窓がスカスカな状態になる事!
某所で見つけた小田原城天守の模型

こちら、某所で見つけた
小田原城天守のプラモデル。
ご覧の通り、窓が空っぽで
向こう側が透けてます。
実際の天守建築では、
こんな丸見えな訳がなく
せっかくの再現模型が、
ちょっと味気無く
感じられてしまうんですよね〜。
大天守古写真(部分拡大)
実際の名古屋城天守の
古写真(部分拡大)がこちら。
窓の中には格子が
組み込まれています。
こうでないと窓に締まりが
無くて、城郭としての
威風や厳格さが
感じられません。

ここまでの行き掛かりをご覧になれば、もう皆さんお分かりですよね?
窓の格子をキッチリ填め込んだろうやないか〜ぃ!

と云う事で、石垣を細かく色塗りしたのと同じように
部品の窓という窓に、格子を生成!
ニクロム線1本1本を接着
ニクロム線を買ってきて、窓のサイズに合わせて切断(だいたい7〜8mm)し
それを窓1箇所につき3本ずつ、間隔を揃えて貼り付けていきます。
シルエットにすると…
シルエットにすると、
格子が在ると無いとじゃ
全然引き締まり方が違います。
作業し始めの段階では
面倒だから、やっぱ止めようか?と
くじけそうになったんですが
この差を見たら、むしろ全部綺麗に
仕上げないと納得できなくなり(爆)
しかし全部仕上げると言っても簡単な話ではない訳で。
綺麗に揃えるとなると、かなり神経を使うんですよコレ。
石垣に2年以上をかけた上、この作業に1年ほどを費やし… (x x)
ホントにいつ出来上がるんだよ、この模型(完全自爆っ!)



さて、一方で屋根の色塗りも同時進行。名古屋城は築城当初、
大天守の屋根が本瓦葺きだったんですけど、江戸時代中期の
宝暦年間(1751年〜1763年)に大改修が施され、2層目以上の屋根が
銅瓦葺き(銅板を屋根に貼り付ける技法)に変更されています。
オイラが製作しているのはこの宝暦改修直後の様子を想定したもの。
銅瓦は緑青(ろくしょう、銅の錆)が浮き出るので、その色を再現すべく
色を調合してみます。ここが名古屋城のキモだと思うんですよねー!!
銅瓦色の調合
この3色を混ぜ合わせます。
だいたい、エメラルドグリーンが5
みず色が3、ライトブルー2の比率。
それにつや消し剤を少々投入。
作成した色
出来上がった塗料を、
屋根パーツに塗っていきます。
(先行して橋台控柱の小屋根に使用済)
まぁ、屋根パーツは元々
緑色になっているのですが…。
緑青を塗色
やっぱり、塗ってみると
微妙に色合いが違う。
この差が、完成した後で
大きな差になる訳です。
本瓦は青系で
緑青の塗色と同時に、
本瓦の部分は青系で。
ちなみに、青系の中でも
軒下瓦の部分はまた更に
細かく色を変えてます。

言うまでも無く、軒裏は
つや消し白で漆喰を再現。



さて、長いこと下拵え作業ばっかりやっていると
いい加減、飽きて…もとい、気分転換したくなると言うもの。
とりあえず、準備の整い易い多聞櫓だけでも作り始める事にしました。
ですが、ですがね (^ ^;
こちら、不開門に隣接する多聞櫓。
パーツのまま作ると、このように
L字型をした平面になるのですが
これは正しい形ではないのです!
パーツのままだと
修正するため切断
そこで、組み上げたい
形になるよう、部品を切断。
焼き切った部分は
ヤスリをかけて
断面を整えました。

余った部分も、後で別の
部品を調製する為に保管。
実物の形はこう
多聞櫓部分は元来、
こういう形状。
屋根だけじゃなく、
壁面パーツも改変し
この形になるよう
仕上げています。しかし、
それだけじゃ終わらない!
またパーツ自作 (^ ^;
この櫓、名古屋城の中では珍しく
下見板が張られている筈ですが
キットではそうなってないので
その部品を自作しないと(苦笑)
(下見板って何?と言うのはナシでw)
パーツを繋ぎとめていた
ランナー(枝)を炙って
細く引き伸ばし骨組みにし
それをプラ板に接着。
自作下見板
その土台に、更に細い
プラ板を数枚貼り付け
細かい鱗状の板になるよう
カッターで裁断。これを
木目の色で塗ると…
まるで算盤だ、コレw
実は一番最初、下見板を作るに当たって
1mm四方の細かい鱗の板(というか、殆ど粒子)を大量生産し
それを土台のプラ板に貼り付けていく、つまり実際と同じ製法で
下見板を作り上げたんですが、さすがに細か過ぎる作業なんで
綺麗に作れなくて、この方法に切り替えたんです。
…我ながら、限度を知れと言う感じですな (x x)
下見板を貼り付け
で、その下見板を
櫓の壁面に貼り付け
このようになりました!
屋根を被せてしまえば
全く見えなくなる場所ですが
ちゃんと櫓の床板も設置。
完全に自己満足の世界ですが、
やる事はやっておかないと!
床板も入れてます!
糒多聞 西南面糒多聞 北東面
屋根も塗装した上、取り付けるとこのような姿に。
写真左、南面は元々のパーツの切断面を上手く切妻屋根に加工し(ちょっと自信作)
西面の入母屋屋根は細かい懸魚の装飾を木工用ボンドで調製。
砂利を敷き詰めた時と同じく、爪楊枝を使ってミリ単位以下の造形を施し
まさしく「漆喰芸術」を実践!(伊豆の長八かよw)ボンド最強〜♪
写真右、北東面は多聞櫓がそのまま連なる筈の部分なので
“そこで切断している”という意味を持たせて黒いプラ板を貼り付けました。
なお、古写真を見ると何故か東面の壁だけは下見板張になっていないので
模型でもそのように再現しております(張り忘れじゃないんです、これはwww)



という所で、またも長文になったのでこの頁はここで終了。
まだまだ製作作業は長引くので、次の頁へ続きます…(滝汗)




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