常知らぬ 道の長手(ながて)を くれくれと
如何にか行かむ 糧米(かりて)は無しに 山上憶良
[農民の困窮を詠んだ歌]
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田児の浦ゆ うち出でて見れば 真白にぞ
不尽(ふじ)の高嶺(たかね)に 雪は降りける 山部赤人
[意味] 田子の浦に出て見れば、富士山には真っ白な雪が降り積もっている。
[旅情や自然の美しさを賛美した歌]
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験(しるし)なき 物を思はずは 一坏(ひとつき)の
濁れる酒を 飲むべくあるらし 大伴旅人
[日常生活から出た感情を詠んだ歌]
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うらうらに 照れる春日(はるひ)に 雲雀(ひばり)あがり
心悲しくも 独りしおもへば 大伴家持
[意味] うららかな春の陽光にヒバリが飛び立つ。
独り物思いに耽ると、悲しい心が押さえられない。
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唐衣(からころむ) 裾に取りつき 泣く子らを
置きてぞ来ぬや 母(おも)なしにして 防人
可良己呂武 須宗尓等里都伎 奈苦古良乎
意伎弖曽伎怒也 意母奈之尓志弖 《万葉仮名表記》
[意味] 服の裾に取りすがって泣く子供らを残し、防人としてやって来た。
子供達には母親がいないというのに…。
[防人の労苦を詠んだ歌]
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