堀のつくり


城郭防衛の基本となるのが堀である。
古代の環濠集落にも見られるように、地面に起伏をつけて
外部からの侵入を妨げることは最も確実な防御方法であった。
時代の変遷につれて堀の掘削技術も向上し、
戦国時代の城郭には複雑で巧妙な堀がつくられている。

空堀と水濠
堀というと満々と水をたたえた水濠を思い浮かべる人も多いだろうが
城郭の堀は水の無い空堀も上手く利用している。
空堀は「敵を落とす」ことを主眼としたもので
直接的な転落死や堀内で立ち往生する敵を討取るのが狙いである。
よって、堀への落ち込みを想定する設計であり
堀底には竹槍・乱杭や起伏を設け、落ちた者を殺傷・足止めするようになっている。
また、非常時の脱出路として活用する場合もある。
水源の乏しい山城では特に重要な設備であり
曲輪を分断する形態のものだけでなく、
尾根伝いに侵入する敵を食い止める竪堀・堀切なども多用される。
竪堀と堀切1が竪堀 2が堀切
一方、水濠は名前の通り水を蓄えた濠設備であり
幅や形状により「敵を渡らせない」ことを主眼としたもの。
底が見えないことで攻め手の不安を煽り、
水運・飲料水・防火用水としての副次的活用もできる。
河川・湖沼・海をそのまま濠として使うことも可能。
ただし、水濠がある事は城が低湿地にあることを意味するため
豪雨で浸水したり、攻城側から水攻めの対抗手段を取られ
城が孤立化する危険性もある。
なお、一般的には「堀」の字を当てるが
水がある場合は「濠」の字を用いることもある。
空堀・水濠共に城郭の主要な構成要素であり、
両者の中間的な性格として沼や泥を用いた「泥田堀」というものもある。

堀底の形状
堀の底にもさまざまな形状がある。
断面の形状として4種類のものが挙げられる。
底が平面となっている箱掘【図1】
U字形の断面となる毛抜堀【図2】
V字形の断面となる薬研(やげん)堀【図3】
片側が箱堀、他方が薬研堀となる片薬研堀【図4】である。
箱堀・毛抜堀の底面は土を固めただけの場合だけでなく
底石を敷き詰める場合もある。
堀底の形状
空堀の場合、上記の通り底に竹槍や乱杭などを敷き詰めて
落ちた敵を傷つける仕掛けをすることがあるが、
この他に、堀底に小さな土塁を作り
敵の行動を制限するつくりもある。
堀底に田んぼの畔(あぜ)のような
土手を作って仕切るものを畝(うね、うねびとも)堀
畝堀を発展させ十字の土手を作ったものを障子堀という。
(実際に畝内で耕作をし自給自足した可能性も指摘されている)
特に後北条氏の山城に多い堀形状である。
山中城畝堀
山中城(静岡県)の畝堀
※障子堀は「大天守」山中城の頁に掲載




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