1998年11月 皇居散策

旅行期間:1998年11月01日(日)

主な滞在地
11月01日(日):

日比谷公園・東京駅丸の内口・和田倉噴水公園
皇居東御苑・皇居外苑・旧法務省本館
皇居散策行程地図【広域図】 (C)ちず丸


ウチの母親が東京の日比谷で用事がある(同窓会だったかな?)らしく
行き帰りの送り迎えに車を出して欲しいとの事。要するに、運転手やね。
別にオイラは東京に用事があるというワケでもなく、普段だったら
何をわざわざ混雑する都心に車を出さにゃならんのだと考える所なのだが
よくよく思い直せば、日比谷…都心…皇居の目の前!
実の所、それまで江戸城跡である皇居というのはまともに行った事がなかったのである。
日比谷に行く要件ができたのならば、これはもう江戸城に潜入するべし、と考え直し
送迎役を承諾したかすこば。斯くして日曜のお昼過ぎ、都心のど真ん中である
日比谷公園の地下駐車場まで運転し、母親は所用へと向かい
拙者は皇居近辺の散策へと足を運んだのである。

日比谷公園も初めて来ましたが、思った以上に広い公園ですな。
日曜日という事もあって、休日を楽しむ人たちが多く
パッと見、ここが東京の真ん真ん中とは思えない。
だいたい、かなり緑深い場所なんだよね、この公園。
敷地から一歩外に出ると高層ビルが林立しているオフィス街なのに
公園の中だけは木々が生い茂っているなんて、この差は一体…。

日比谷公園の北側に出ると、そこは皇居の御濠端。
まずは濠の外側に沿って歩き、丸の内のビル街を横目に進む。
早く城内に入ってみたいという気持ちを抑え、ここは落ち着いて闊歩。
そうこうしていると、右側によく見たことのある建物が…。
近代日本屈指の名建築、東京駅の赤レンガ駅舎がそこに登場したのである。
平日とは違う日曜のお昼過ぎとあって、道路の交通量は大した事なく
皇居の淵から一直線に東京駅まで眺める事ができたのでした。
色づいてきたイチョウ並木の建ち並ぶその先に構えた赤レンガの建物は
何だかヨーロッパの伝統的古都市の風貌をも匂わせた。
日比谷公園といい、東京駅前といい、今日の丸の内は
騒々しい東京都心のイメージとは全然違う雰囲気で驚いた。
国重文 東京駅丸ノ内本屋
国重文 東京駅丸ノ内本屋

この当時は単に古い伝統ある駅舎というだけだった
東京駅丸の内口の赤レンガ建物ですが
2003年(平成15年)5月30日に
国の重要文化財として指定されました。
この日は空気が澄んだ秋の日だったので
皇居前から遥か遠くにある駅舎が見渡せました。

皇居散策行程地図【詳細図】 (C)ちず丸

東京駅前の通り抜けを写真に収めたら、今度は目の前に大きな噴水池が現れた。
ここは和田倉噴水公園。和田倉濠と桔梗濠に挟まれた一角が
そのまま親水池になっていて、何だかとても涼しげ。
丸の内付近というと、殺風景なビル群ばかりだと思っていたんだけど(←偏見)
結構綺麗な所が色々とあるんだねぇ。もっとも、平日の昼間なら
オフィス街で働く人たちで溢れて、もっと違う雰囲気なんだろうけど。
そうそう、皇居の御濠端というとジョギングする人たちの定番コース。
この日も走っている人たちを何人も見かけました。
「おーっ、ホントにこういう人がいるんだぁ」とまたもや感心。
改めて来て見て、皇居近辺ってなかなか面白いもんだなぁと思いましたよ。

さていよいよ江戸城の遺構を見学する場所へ到着。
皇居東御苑の入口、大手門でございます。この門から内側が
江戸城の三ノ丸、つまり内郭部になるわけで、数ある江戸城の城門としては
最高の格付けとなるまさに「正門」ですな。櫓門部分は太平洋戦争の空襲で
惜しくも焼失し、1967年(昭和42年)に再建されたものですが
高麗門部分は江戸期からの現存建築と言われています。
その大手門を通り抜けると、前に広がるのは宮内庁病院やら
皇宮警察本部など、皇室関連の施設庁舎たち。もちろん、これらは
見学できるような施設ではないので、その前を素通りするのみ。
決められた通行路を通って西へ向かい、三ノ丸から本丸方面を目指します。

江戸時代からの遺構、百人番所の前を過ぎるといよいよ本丸部分。
この百人番所は文字通り百人の同心が詰めていた本丸入口番所で
番所建築としては日本最大のもの。城内で最も固い検問所で、
ここを直進すると本丸、北側に向かえば二ノ丸に入る分岐点でもある。
その百人番所から本丸へと進むと、次に現れるのが中の門跡。
門跡地の脇には大番所の建物も残っている。
そこを過ぎれば、遂に本丸へ到着だ。江戸城に現存する唯一の三重櫓である
富士見櫓の裏側へたどり着くので、その場から北側に広がる本丸跡地を俯瞰。
―――いやぁ、広いわ、こりゃ (^^;

蓮池濠に沿って本丸跡地を北へ向かって散策。
そのルート上には、忠臣蔵の講談で有名な本丸御殿松の廊下跡地や
現存する建物の数奇屋多聞櫓、用途がよくわからない謎の石室などがあり
かつての江戸城本丸を窺わせる遺構が散見できる。
何より、このあたりは植えられている樹木が沢山あるので
まるで森の中に迷い込んだような感覚にさせられるのが驚きですな。
そうこうしている間に、本丸の北端に到着。そこにあるのは天守台である。
これがまぁデカいのなんのって。その大きさにまたもや驚きですな。
普通の城の櫓が3つ4つ入りそうな大きさだわな、こりゃ。ちと非常識なくらいだね。
今に残る石組みは天守が焼けた振袖火事の後に組み直されたもので
元々の天守台はそれよりも更に大きかったというのだから
実際の天守は一体どれほどまでに大きかったのやら…もう気が遠くなりそう。
建物の割図から推測すると、石垣から上の建築部分だけで高さ44.8m
石垣も含めた高さだと60.6mにもなるらしく、超高層ビルの基準に相当するんだと。
今から400年近く昔に、木造建築でその高さ、大きさとは…全く凄いもんだね。
逆に言うと、現代ではそこまでの木造建築を建てる技法が廃れてしまい
これほど大掛かりな建物を作るだけの木材も調達できない事から
伝統工法での再建は不可能らしいです。
火事で失われて現存しないのがつくづく惜しい気がします (T-T)

本丸北端で折り返し、今度は東側を歩きます。
この辺りには皇室書陵部・桃華楽堂・楽部といった建物が並んでいる。
特に桃華楽堂は、鉄仙科(クレマチス)の花を模ったデザインの建物で
一風変わった八面体の外観をしている。もともとこの場所は
江戸城大奥のあった所なのだが、今ではこんな可愛い(?!)建物があるとは
時代は変わるものなのですなぁ ( ̄_ ̄)トオイメ
桃華楽堂
桃華楽堂

これがその桃華楽堂。
写真を見せないで文章だけだと
イマイチ説明しづらい建物です (^^;
そうした建物の脇を抜けると汐見坂門の跡。本丸から二ノ丸へと続く門で、
下り勾配が結構急だったりします。坂沿いには十月に咲く季節外れの桜があったりして
ちょっと驚かされました。さて、その坂を下りるとかつての二ノ丸跡。
現在では二ノ丸庭園になっていて、かつて将軍様もここを散策したのかと思わせる
美麗な和風庭園が作庭されております。建物などは全然ありませんが
これはこれでなかなか風雅なもの。とても東京とは思えない静かさだし…。

二ノ丸を出ると、再び百人番所の前に戻ってきます。
皇居東御苑の散歩はこれにて終了。来た道を戻り、大手門から外に出たら
今度は皇居外苑を目指し南下します。ちなみに皇居東御苑は
月曜日・金曜日以外の日(宮中行事日・年末年始を除く)無料公開しています。
3月〜10月までは9:00〜16:00、11月〜2月は9:00〜15:30が入園時間です。
さて和田倉噴水公園まで来てみれば、桔梗濠越しに
三ノ丸巽櫓・桔梗門・富士見櫓が一直線に並び、絶好の写真撮影ポイント。
もちろん、拙者もここでシャッターを切りましたぞ。
そのまま皇居外苑、かつての西の丸下曲輪へ入ったかすこば。
昔、この辺りには大名屋敷が並んでいました。
桔梗門の出入口前を通り、蛤濠の淵を進めば
次に見えてくるのは坂下門。江戸時代末期、老中の安藤信正が襲撃され
老中辞任問題にまで発展した事件、坂下門外の変が起きた場所だが
現在に残る坂下門の櫓門は移設されたもので、もともとの位置は
角度にして90度違いの位置、現在の南北棟向きではなく東西棟向きであった。
濠の向こう側にある建物、しかも濠の内側は皇居という事なので、
間近に近寄って見る事はできないが、遠目に見ても大きな建物だ。
さすが将軍様のお城だけあって、どの建物も格別に大きいものばかりだねぇ。

坂下門外から真っ直ぐ南へ下ると、東京一の観光名所である皇居前広場だ。
有名な二重橋、皇宮入口は言うまでもなく記念写真の撮影ポイント。
この日も観光ツアーと思しき団体客が群れを成していて、
オバちゃんたちが写真を撮り合ったり、団体写真の列を組んでいたり…。
そんな観光客の隙間を縫って、あくまでも「城の写真」を撮りたいオイラは驀進し
皇居正門になっている西の丸大手門や二重橋の向こう側に建っている
伏見櫓・多聞櫓などの建造物をファインダーに納めたのであります。
で、写真を撮ったらさっさと撤収。
目的さえ達したら、こんな混み合った場所に用はありません(オィオィ)

皇居外苑の出口は桜田門。ここも幕末、大老の井伊直弼が暗殺された事件
桜田門外の変が起きた場所として有名ですね。
桔梗門を内桜田門、この門を外桜田門と呼ぶ事もあります。
巨大な櫓門、大きな出枡形虎口、そして門外には国会議事堂を眺める事ができ
結構いい場所ですな。江戸城、というとどうしても皇居二重橋が観光スポットで
桜田門に注目する人はなかなかいないと思われますが、なかなかどうして
桜田門のほうが都心見物の中心点になるような気がしますぞ。
門を出た目の前には東京警視庁の大きな庁舎がそびえ建っており
昔も今も、ここが首府を律する治安拠点である事は変わりないようです。

桜田門を出て、車を停めた日比谷公園駐車場へと歩く道すがら
目に入った建物が旧法務省本館。警視庁の向かい側にある建物です。
近代化激しい丸の内官公庁街にあって、
これだけが明治時代から残されている赤レンガの官公庁建造物でありまする。
同じ都心にある赤レンガ建物でも、東京駅よりももっと古い建物であり
国の重要文化財に指定されている由緒あるもの。
(現在では東京駅舎も重文に指定されています)
明治時代から残る官公庁舎は東京都内ではここだけ(らしい)。
いかにも明治、という感じの赤い建物は、灰色の高層ビルばかりが建ち並ぶ中
とても目立つし、美しいデザインで異彩を放っていました。
もちろん、これも写真に撮ったかすこば。時刻は既に夕刻で
そろそろ母親との待ち合わせ時間となったので、
本日の東京都心散策はこれにて終了とし、駐車場にひき返しました。
いやぁホント、皇居近辺って結構面白い所がありますね♪
国重文 旧法務省本館
国重文 旧法務省本館

こちらも赤レンガの古い建物。
東京駅舎よりひと足早く、
1994年(平成6年)12月27日に
国の重要文化財に指定されました。
東京駅舎と似た雰囲気で好い建物です。



◆◇◆ いにしえの 城の名残に 秋の空 赤く色づく 葉と煉瓦(レンガ)哉 ◆◇◆




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