2000年9月 日光参詣 〜峠越の章〜

旅行期間:2000年9月24日(日)

主な滞在地
9月24日(日):轟城跡・大猷院廟・金精峠・菅沼・丸沼・鱒飛の滝・吹割の滝
日光参詣 〜峠越の章〜 行程地図


大猷院廟(たいゆういんびょう)、徳川3代将軍・家光の霊廟。
西暦2000年はその大猷院廟が創立以来初めて奥之院を一般公開する事になり
話題になった年であります。当然、歴史好きの拙者としても見に行きたいもの。
夏の暑さが過ぎた9月下旬、紅葉で混雑する前の日光へ行き
是非とも期間限定公開の奥之院を見学しよう、と決意。
9月24日の早朝5時過ぎに家を出て、首都高が渋滞する前に都内を通り抜け
東北自動車道で宇都宮方面を目指したのでござりまする。

宇都宮ICから一直線に日光へ向かうのは日光宇都宮道路。
で、日光の観光地を見るならば普通は日光ICで下りるんだけれども
拙者は今回、その手前の今市ICで一般道へ。何の事はない、地図を見たら
今市市の奥に城跡の地図記号を見つけたからなんです (^^;
国道461号線を塩屋町方面に北上、市街地の喧騒を離れたあたりで見つけたのが
轟城なる古城。何でも、鎌倉時代の武家居館だとか。
確かに、戦国時代の城跡とは違い簡素な作りではあるけれど、
里山の静かな場所で天然の小川を堀に利用した構えはなかなか。
ほほぅ、鎌倉武士の館ってのはこういうものなのかぁと感心させられました。
でも…まぁ、このテのマニアしか行かない場所ですな、ここは。
入口も分かり難いし、一般の人がわざわざ行くような所とは思えません(苦笑)

気を取り直して(?)、日光市街へ。今回は一直線にお目当ての大猷院廟へ
向かいます。東照宮も輪王寺も二荒山神社も無視です(←罰当たり)
いーんです、拙者は日光の史跡の中で大猷院廟が一番気に入ってますから。
そんなこんなで、薄く霧のかかる天気の中で訪れた大猷院廟、
さすがに奥之院期間限定公開という状況だと凄い人込み。
うーん、いつもだったら観光客は東照宮ばかり行って
大猷院廟なんてガラ空きだというのに…。広報の集客力を少し恨みつつ、
境内に入った拙者なのであります。山門、拝殿へと進み本殿をぐるっと回周。
ここまでは普段も見られるようになっている所ですが、
今回のお目当てはこの先。竜宮門こと、皇嘉門が開放されて
山の上へと登る階段が通行できるようになっています。ここからが
特別公開の区画で、観光客がその階段で渋滞を起こすほどでした。
のろのろと階段を登り、ようやく着いたのが奥之院。
奥之院拝殿を見学し、その裏にあるのが鋳抜(いぬき)門。家光公墓所の守り口です。
流石に鋳抜門は閉じられており(当たり前だ)墓標となる宝塔は
人を寄せ付けずひっそりと佇んでおりましたが、東照宮にある家康公宝塔と同様
趣深い重厚感があるその姿は公方様を祀るのに相応しいものでありました。
国宝 輪王寺大猷院廟 奥之院鋳抜門と宝塔
国宝 輪王寺大猷院廟 奥之院鋳抜門と宝塔

大猷院は輪王寺に付随する神社とされています。
で、こちらが奥之院の様子です。
鋳抜門と宝塔、両方とも国宝。
鋳抜門は間口2m、奥行1.5m、唐銅製。扉には
魔除けの十二天を意味する梵字が彫られています。
宝塔は高さ4m、唐銅製。釈迦如来像と
家光公の霊牌が入っているそうです。
それにしても、人が多いなぁ…。
ところで感心したのはやはり石垣。見事なほどの切込ハギ!
霊場の斜面を固める為に、そこかしこが石垣になっているんですが
築城技術で養われた高等技法が将軍家の霊廟にも使われております。
大猷院が創建された1650年代ともなれば築城技術も究極的になってますから、
その技術がそのまま霊廟構築に使われていてねぇ。
いやー凄い!しかも巨石ばかり。加えて緻密!
さすが将軍家、墓地も贅沢なつくりですよ !!
ちなみに切込ハギってのは、石の外面を全部きれいに削って
完全なブロックのような状態にして積み上げる工法の事です。
ただ自然石を積むのではなくて、寸分の隙間なく積み上げていくので
頑丈でとても高い石垣が築けます。その分コストも高いので
ごく一部の大大名や徳川幕府にしか出来ない芸当なのです。
土木技術史的には江戸時代に入ってからの新技術でして…
これ以上詳しい事は、未申小天守の頁を見て下さい(爆)

奥之院から再び麓に降り、山門までやってきました。で、一般の観光客は
ぞろぞろと右手の出口へと帰っていきます。でもここ、左手の庭園へも
行けるようになってるんですよね。史跡好きの拙者としては、
多数の観光客と同じ行動をするだけじゃ気が済まない。ここは一発、
左に進んで幽玄庭園を拝ませていただく事にしました。
寄進された多数の燈籠が立ち並ぶ先には、静かな庭園と建物が…。
おぉ、何だかこれは良い感じだぞ。観光客が誰もいないのもまた良い。
桜の葉だけがひと足早く赤く色づき始めているものの、緑の木々と草木が並び
この静けさと雄渾さに包まれるのはとても贅沢な感じがします。
あー、やっぱ旅はこうじゃなくちゃねぇ… ( ̄〜 ̄)
輪王寺大猷院廟 幽玄庭園
輪王寺大猷院廟 幽玄庭園

はいこちら、幽玄庭園の写真。
奥之院の人ごみが嘘のようです。
庭園へ続く小径の両脇には燈籠が並び
和の趣と霊廟の荘厳さを上手く醸し出しています。
こういうの、善いでしょ?
(まぁ、人それぞれの好みですが…)

大猷院廟を辞した拙者は、他の寺社を見る事なく
さっさと車に乗り込み日光市街地を後にしました。
いーんです、今回は東照宮や二荒山神社は見なくて(←やっぱ罰当たり)
大猷院廟の他にもう一つ、金精(こんせい)峠を越えるのがこの旅の目的だったんです。
ですから兎にも角にも、国道120号線を山の上へと登って行きます。
先を急ぐ拙者は、混雑するであろう華厳の滝や中禅寺湖も素通りし
男体山の麓をひたすら突き進みます。途中、戦場ヶ原の
三本松園地で一休みだけしました。この戦場ヶ原、古の伝説によれば
中禅寺湖をめぐって男体山の神と赤城山の神が領地争いをし、
男体山からは大蛇の群れが、赤城山からは大ムカデの群れが遣わされ
戦ったといわれる場所でございます。だから戦場ヶ原なのね。
で、その戦いで流れた血が赤い沼になったというのですが、
その伝説はともかくとして、実際、もともと戦場ヶ原は
男体山の噴火で流れた溶岩が湯川を塞き止めて出来た
赤沼湖なる湖だったそうです。その湖に、少しずつ土砂が堆積し
いつしか湿原になり、戦場ヶ原になったんだとか。
ふーむ、伝説と科学、どこまでが空想でどこからが現実なのか
入り混じって境界を引くのが難しいものですけれど
関連性があってなかなか面白い話ですなぁ。

さて、車はいよいよ金精峠に差し掛かりました。
この金精峠、冬季に雪が積もりはじめると通行止めになる区間で
関東屈指の積雪ルートとして有名です。まぁ、まだ雪どころか
紅葉すら始まっていないんで、関係ない話なんですが
そういう特別な所なんで、一回走ってみたかったんですよ。
その峠を越えると、栃木県から群馬県へと入ります。
峠のトンネルを抜けると、一気に下り坂。何度かの
ヘアピンカーブを曲がると眼下に菅沼が見えてきました。
これがまぁ、エメラルドグリーンで綺麗な湖だこと!
思わず車を路肩に停めて、写真を撮影。
日光だけでなく、峠越えしてきて良かったー♪と思える瞬間でした。
菅沼
菅沼

これがその時の写真。
見て下さい、エメラルドグリーンの湖面を!
この紺碧色を目にした瞬間、
「これは写真に撮らなアカン!」と
とっさに車を停めたのでありました。
(なぜ関西弁?)

菅沼の下にあるのが丸沼。これまた綺麗な湖です。
こちらは湖沿いにキャンプ場やロッジがあり、駐車スペースもあります。
山の中の静かな湖なんですが、そういった施設があるので
結構観光客が来てました。菅沼と丸沼、金精峠の下にある2つの小さな湖は
大自然に包まれた素晴らしいリゾートになっているようです。
家族連れで遊びに来るのも良いかもしれませんねー。
丸沼
丸沼

はい、こちらは丸沼です。
日本景勝百選の湖沼の部
第一位を取った場所です。
文句なしに、美しい湖なのです。
とにかく、良いです。

国道120号線を下りて進むと、片品村の中心街で国道401号線に合流します。
進行方向右手、その401号線に入っていくと尾瀬ヶ原になりますが
今回はもう時間がないので、尾瀬には行けません。120号線をそのまま
沼田市方面に進む事にしてしばらくすると、吹割(ふきわれ)渓に到着。
片品川が山間部から平野部に切り替わり一気に速さを増す場所で、
このあたり随一の景勝地になっています。尾瀬をパスした拙者は
こちらを見物する事にしました。駐車場に車を止め、渓谷沿いを散策。
すると見えてきたのが鱒飛の滝。どっしりとした風格の滝で
流れを切り裂くように突き出た岩が印象的でござるな。

その先にあるのが有名な吹割の滝。東洋のナイアガラと呼ばれるこの滝は
なるほど、確かにナイアガラのように横に幅広く、
滝の流れがV字形に切れ込んでおります。まぁ、本家ナイアガラほど
巨大な滝ではないけれど、この佇まいは見事ですな。
思わず見とれてしまう、何とも優雅な姿でございます。
雨上がりだったので少し水が濁っていましたが
これはこれで迫力を増してくれますな。
で、吹割渓の散策路をぐるっと回ると、次第に川から離れ
渓谷全体を見下ろす山の中へと入るようになります。
紅葉前の緑に包まれ、川音に耳を澄ますのはこの上ない贅沢かも。
そうこうしているうちに、眼下に吹割の滝が見える位置までやってきました。
滝の全景を上空から眺めるのは最高!おぉ、これは凄いぞ !!
思わず望遠レンズを取り出して、その姿を撮影。
いやぁ、散策路を全部歩いた甲斐があったというものです (^^)v
国名勝・天然記念物 吹割渓・吹割の滝
国名勝・天然記念物 吹割渓・吹割の滝

ググっと迫って、滝の目の前で撮影しました。
現在は転落防止の柵が設置され、
こんなに近づけない(らしい)のですが
この時はまだ、ギリギリまで近寄る事が出来たんです。
女性的な美しい滝なんですが、
こうして撮ると迫力あるでしょ?

さて、目いっぱい詰め込んだ金精峠東西の周遊ですが
気がつけばすっかり日暮れの時間。吹割渓を後にして、急いで帰路に着きました。
国道120号線は日本ロマンチック街道と別称されるほど
高原ののどかな風景を楽しめる道なんですが、もう帰るだけなので
とにかく一目散にすっ飛ばし(オイオイ)、沼田市中心部方面へ。
途中にあった道の駅・白沢で休憩を取った後、そのまま関越道に乗りました。
うーん、沼田も有名な城下町なんだけどなかなか見る余裕がないなぁ。
少し惜しみつつも、高速道路を南下して東京方面に向かいます。
途中、鶴ヶ島JCTで圏央道に乗り、入間ICで国道16号線に。
後は例の如く、橋本五差路で国道129号線に入り、茅ヶ崎へと帰ったのであります。
いやぁ、あれだけ端折ったのに時間が足りないなんて、
やはり北関東は近くて遠い。本当は日光ももっと見たかったし
群馬県側はまだまだ見所が多そうだったんだけどねー。
まぁとりあえず、大猷院廟や金精峠、吹割の滝が見れたので大満足。
かなり充実した1日ではありました。よっしゃ、この調子で次の旅も楽しもう!


◆◇◆ せまりくる 秋の風情に 物思ふ 人智を超ゆる 峠の彼方 ◆◇◆




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