★★★相州乱波の勝手放談 ★★★
#08 神と呼ばれる女、神を超えた男
 




最初にお断りしておきます。
今回は歴史の話ではござひません!
お城の話とかでもござひません!!

旧世紀、8ビットPC時代のゲームミュージックのお話
この時点で、大半の方は興味が無い筈。
それどころか、何のことやら分からないであろう話の筈。
不可解な話には関わりたくない方、以下読まずに結構でございます m(_ _)m
まぁ、どうせ所詮は“勝手放談”ですので…(爆)

え、「歴史や城の話だってお前の戯わ言は読む気ねーよ」って?
はい、ごもっともでございます… (^ ^;;;


そうは言っても、腐っても相州乱波ですから
PCゲームと言えば、イコールと言って良いほどに話題とするのが
光栄(当時ね)の「歴史三部作」とりわけ「信長の野望シリーズ」。
少〜しばかりは歴史に絡む話題です…かね?


当時、オイラが扱っていたPCは88、次いで98、オマケでFM-TOWNS。
ホラこの時点でもう分からないでしょ?(笑)

※88・98・TOWNS
一応、解説しておきましょうか。88は「ハチハチ」、98は「キューハチ」。「キュッパチ」って読む人も。
正しくはPC-8801シリーズ、PC-9801シリーズ。当時のパソコンはWindows統一の現在とは違い
各社・各機種ごとの動作環境で動くものばかり、ソフトも当然ながら互換性なし。
(要するに、88用のソフトは88でしか動かないワケ)
そんな中、日本国内でのシェアを寡占していたのがNECの88や98でした。88は8ビットCPUで動作し
98はそれを16ビットにした…というのが簡単な説明ですかねぇ?何にせよ、8ビット16ビットという世代ですから
パソコンと言えども、今のようにフレンドリーな家電ではなく「いわゆるカタブツな“電子計算機”」という代物。
性能もファミコンに毛が生えた程度(いや、当時は明確な性能の差でしたけどね)しかなく
これをいじくる輩は、まさにオタクの元祖…超マニアな人間ばかりでした。98シリーズは最末期に
Windows対応のPC-9821シリーズに代わっていきましたが、それと対抗するように出ていたのが
富士通のFM-TOWNSシリーズ。Winも動きつつ、独自OSでの動作も前提となっていたんですが
操作環境はほぼWinと同じだったんで、今考えるとあれは意味があったのか…?(苦笑)

―――閑話休題(と書いて「話が進まん」と読む)
88版の「全国版」「戦国群雄伝」と遊び倒し、TOWNS版で「覇王伝」「天翔記」、
さらに98で「(前後してるけど)武将風雲録」「(こっちでも)天翔記」。最終的にWinで
「烈風伝」までやったけど、今でも最高傑作と思えるのは「天翔記」だなやっぱり。
その後はすっかりゲームから離れてしまったんだけど、信長シリーズは
この時代が一番アツかったんじゃないかと思うので、それで良しとする。
で、この時代の信長BGMと言えば、ほとんどの作曲を手掛けていたのが
(まだ無名の頃の)菅野よう子女史。彼女の評を今更ここでするのも何だし
世に言われている通り、世界観の表現が上手いと言うことに尽きよう。
兎にも角にも、信長BGMと言ったらこれ。まず聞いて頂きたい。


渋い。激シブ。これから戦国時代へ突入する(ゲームを開始する)のにピッタリだ。
信長シリーズでは不動の地位を占めるようになり、
続編でも初期設定BGMは固定となっている。



後の作品になるにつれ、曲数も増えていった信長シリーズ。
有名な大名ごとに、そのテーマ曲的なものが使われるようになる。
どれも雰囲気があって良いのだが、個人的に秀逸だと思うのが


これまた渋い。独眼竜が奥羽で雌伏していた様子にも
雪深い冬を耐える東北の民の情念にも感じられる曲調。
そして一転、これは狂気を含んだ曲…。


本願寺勢力が合戦に及ぶ時のBGMである。
が、これは「本願寺が攻めている」様子ではなく
どう聞いても「本願寺に攻められている」曲であろう。
“死ねば極楽”の一向一揆、我れ先に死のうという狂気の門徒が
まるでホラー映画のゾンビさながらに「次々と湧いて出てくる」風にしか思えない。
いやぁ怖い。恐怖だ。信長の心痛が少しは分かる…ような?(気がするだけ)
なまじ無機質なSSG音源(いわゆるピーピー音ね)を主旋律にしているだけに
よけい不気味さが増長…これで良いのか本当に??と思えなくもないが(爆)

そして全シリーズの中で最高傑作と断言できるのがこの曲!


群雄伝では条件を満たせば本能寺の変が起きる。
京都にいる信長に対し、丹波を出陣した光秀が謀反を起こすのだ!
単なる反乱(ゲーム中、そういう場面もある)イベントではなく
きちんと光秀が登場し「敵は本能寺にあり!」の名言を放つのだが
そのイベント中はこのBGMが鳴り続けるのである。
裏切り、憎しみ、反感、そしてそこはかとない悲しみ…。
そういった人間模様が表現され、かつダイナミックな謀反の動きが
存分に感じられるこの曲はまさしく“本能寺の変”そのものと言えよう。
後作でも「本能寺イベント」が起きる場合、
このBGMがほぼそのままアレンジなしで使われ
信長シリーズのイメージアルバムでもオーケストラ版で収録。
時折、TVドラマや歴史番組で「本能寺の変」の場面に用いられている。





いやぁ、さすが菅野女史!世界観の表現が素晴らしい事この上ない。
どこかで聞いたフレーズが多用されるので、
時折「パクリの女王」なんて揶揄されるけど
いやいやとんでもない、それはそれだけ耳に馴染む出来栄えだからだと思うぞ。
東日本大震災復興イメージ曲「花」を作られたのも、
誰にも染み入るメロディーが評価されての事だし、
アニソンやGM(ゲームミュージック)の世界では女王どころか「神」!
菅野女神の思し召しに、当時の信長ゲーマー達は
知らず知らずのうちのめり込んでいったのである(何のこっちゃw)

しかしその神と言えど、コンピュータの性能には抗えない。
当時のPC(特に88/98シリーズ)、シンセサイザの最大和音は
FM音源3音+SSG音源3音の6和音まで。特に初期の信長シリーズは
シンセサイザICの使いこなしが不十分だったり
効果音の発声(戦闘時の射撃音とか、命令実行時のアクション音とか)に
和音を割かれてしまい、6和音全部は使っていなかったようである。
当時の性能限界を知っているオイラなんぞは、これは仕方が無いと
承知しているのだが、初めて聞く方なんかは貧弱なBGMと思われるかも…。

※FM音源・SSG音源
もう読み飛ばしてくれてもいいようなコアな話ですが(爆)
FM音源というのは、シンセサイザの発音方式で出す音(や、その理論)。
PCはつまり計算機ですから、音波の波形を計算で生成してしまえるワケです。
理論上、“計算の上ではどんな音波もFM音源で再現できる”事になります。
(と言っても当時のPCのシンセサイザは今と比べると稚拙な物なんで…理屈通りにはw)
一方のSSG音源というのは、シンセサイザのような高度な発音ではなく
上でも簡単に書いた「ピーピー音」、単純な電子音ですな。
ファミコン(スーパーファミコンじゃなくてね)ゲームの音、と言えば分かるかな?
いや、世の中それすらもう分からんという世代なのかも知れないのが悲しい (^ ^;

試しに聞いて頂きたいんですが、


これはこれで“骨太”感があって好きなんですが、
3音しか使ってない(使えなかった)ので「スカスカ」な骨太(笑)
ところがFM-TOWNS版(シンセサイザ性能が劇的に向上してます)だと


全然違〜う!(苦笑)
リズム音、特にハイハットやシンバルが入ってイケイケな曲調だし
バックトラックの和音も足されて、全体的に肉厚な構成にリニューアル。
これなら今どきの携帯ゲーム機程度には聞こえる筈だ。
シンセサイザICの性能次第で、曲の味付けは大幅に変わってくる。
となると、やはり神とて超えられない限界はあるのか…。






―――なんて思ってると、世の中にはそれを上回る天才が居るのである。
信長シリーズとは関係ない別のゲームであるが、
同じ88で演奏しているBGMを聞いて頂こう。


FM-TOWNSに負けない、いやそれ以上の音圧である。
このクオリティ、別に1曲だけではなく他にも



作曲のセンスもさる事ながら、シンセサイザICを極限まで使いこなしている!
もちろん、信長シリーズと同じFM3音+SSG3音でこの演奏だ。
ちゃんとリズムも入っているし、何より圧巻なのはゲーム時
このBGMを再生「しながら」効果音も「同時発声」していたのである。
これだけの音楽を生み出せる人物、すなわち“神を超えた男”の名は
古代祐三(こしろゆうぞう)。88世代の人間にとっては伝説の作曲家だ。
メディアに露出する機会の多い菅野女史に比べると、古代氏は
「知ってる人しか知らない(当たり前かw)」存在であるが
実は良く聞くあの曲もこの歌も、氏が関わっていたりするのである。

特にあの頃はPC雑誌に古代氏が直々に連載持ってたりして
それを読むのが何よりの楽しみだった… ( ̄- ̄)遠い目

#関係ないけど、古代氏と菅野女史が同い年ってのは単なる偶然だよね。

聞くところによると、古代氏が幼少の頃に師事していたのが
ジブリ音楽で有名な久石譲さんなんだそうな。ここ数年、
そのスタジオジブリと並ぶ人気を誇るアニメ作家が新海誠監督。
新海監督がまだゲーム制作会社に勤務していた頃に作ったのが
リメイクされたYsUのオープニングムービー、
まさしく「To make〜」の流れる中、ゲームのキャラクターが
ガンガン動き回る映像。Ysファンのオイラとしてはもちろん視聴していて
(当時まだ新海監督とは知らなんだが)やはりあの映像美はそれであったかと
今にして納得、という完成度の高さ。凄い綺麗だったんだよねー!
何ともこじつけ的な話の繋がりではあるが、
ゲーム業界にアニメ業界、サブカルなネタは時代を越えメディアの壁を越え
どっかしらで関連してるんだなぁ…というお話でした。




―――さすがにそのムービーまではアップしませんよ (^ ^;
念のため申し添えておきますが、
ここで紹介している曲は全て(サントラからの物も含めて)
著作権に配慮して、アナログ録音でのmp3化ですので。

あぁそうか、プロモーション用のCMムービーなら良いのか(今、思い出した)
これなら元々「頒布用」の動画なんだから公開しても問題なし、と!
そんな訳で、これがその動画(CM用再編集版ですが)です。
髪の動き、雲の流れなんかはまさに新海節www


っつーか、このCM動画自体が新海作品のような???
BGMのリズムに合わせたコマ割りとか
「秒速5センチメートル」のラストとかにそっくりだ(笑)
(誰かこの答えを教えて下さいw)

さて、冒頭で「読まんでもいい」とお断りしておきましたが
最後の最後まで読んでしまった方はいらっしゃるのでせうか?
そこの貴公、ここまで読んだのなら掲示板に一言
「8話読んだ」とお書き込み下さい(爆)




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