★★★相州乱波の勝手放談 ★★★
#07 藤堂高虎を“東軍MVP”にする方法(笑)
 




藤堂高虎 とうどういずみのかみたかとら
 藤堂和泉守高虎。加藤清正と双璧を為す築城の天才。近江国の小豪族から
主君を転々とし、秀吉没後は徳川家康への近侍を果たして江戸幕藩体制の
成立に一助した賢将。武勇も他に並び立つものなく、身長190cmと推測される
巨躯は過去の合戦で負った傷だらけだったという。


#07話は「7度も主君を替えた漢」のお話〜!(こじつけ…w)


#06話に登場した「関ヶ原を取り上げた番組」とは、
某公営放送(しかもBS)が会場に集まった視聴者のトークに基づきながら
西軍東軍それぞれの中から特に活躍した3将を採り上げ、
その中から各軍の“MVP”を選出するという企画でございやした。
当初「参加者の数が足りないから、穴埋めで来て欲しい」という程度のお誘いだったので
まぁ、座ってるだけでいいんだろう…というつもりで出席の返事をしたんですが
一応、事前の参加者アンケート的なものがありまして、
例えば「東軍派?西軍派?」とか「好きな武将は?」とかの質問に
何の気なしに答えた拙者。東軍派か西軍派かというならば、東軍と答えるとして
好きな武将とか訊かれても…。そもそもオイラは「城好き」な人間であって
別に「武将萌え〜!」とか言う気はさらさら無い訳だし。
あぁそう言えば、関ヶ原には「『城好きとして崇敬する』藤堂高虎公」が参戦してたっけ。
んじゃ、それにしとけば良いか―――なんて軽く回答し(てしまっ)たのが運の尽き。

歴史好き(特に昨今の歴史ブームに乗ってる人たち)の中では
東軍西軍のどちらを応援するかと言うと、圧倒的に西軍が好きな人が多いらしい。
(義将義将ギショウギショウと、口を開けばそればかりなのよねんw)
しかも劣勢の東軍派の中で、さらに藤堂高虎に注目するヤツなんざ、
オイラだけだったようで。まぁそうだよね、東軍の中で目立つのは
武闘派の福島正則とか、智将の黒田長政とか、或いは徳川の忠臣・井伊直政とかが
上位にランクされるんであって、なかなか藤堂高虎を推す人は居ないだろうからね。
我ながら、随分とレアなチョイスをしてしまったと思ったのは後の祭り。
番組制作サイドが東軍MVP候補として挙げた選択肢の中に
何故か藤堂高虎が入っていて、しかもアンケートでそれを名指ししたのは
オイラともう1人女性の方だけだったもんだから
「藤堂高虎の推薦トークをして下さい」と御指名を受けてしまった…!


ちなみに他の東軍MVP候補者は福島正則と黒田長政。
(西軍MVP候補者は島左近・宇喜多秀家・大谷吉継でした)


えーっと、ちょっと待って下さいな。
藤堂を選んだオイラでさえ、東軍の「MVP」とまで言える武将を決めるとしたら
間違いなく黒田、百歩譲って福島だと思うぞ。それなのに、藤堂を推薦しろなんて…
絶 対 無 理 ! ! ! ! ! (><)ヒー!
だいたい、TVで語れるほど藤堂高虎を知り尽くしてる訳でもないし!困った!!

ホントにやらなきゃダメ?何とか辞退したいんだけど…と
番組の担当者さんに電話でそれとなくお伺いを立てたものの
藤堂を語ってくれないとこの番組自体が成り立たないとかわされてしまい(泣)

じゃぁ何で藤堂みたいな一般ウケしない武将が候補者に入ってるんだよ〜!! (T_T)


いや、待て。仮にも城好きを公言しているんだから
“城の神様”とも言える高虎公を辱めるような事をしてはならん。
こうなれば、城好きの誇りにかけて何としても高虎公を勝たせなければ!
どうせダメ元、口八丁手八丁でどうにでもしてやるぜ !!
―――という妙な使命感に燃え、開き直って受けて立つ事に方向転換。
しかし、しかしだ。話を受けてから収録までわずかに1日。
学生の頃のテスト勉強にしたって、一夜漬けで何とかなる訳でもないのに
ロクに知識も無い高虎公の人物像を1日で頭に入れるなんて…できるんかいな ?! (^ ^;

半ば自棄気味で収録を迎え、いざ本番。
各武将の推薦者が語る話を聞き、番組サブMCの田○麻紀嬢が一番感銘を受ければ
その武将がMVPとなる、と云うどうにもユルい審査基準だったんだが
逆に言えば、ド素人の女の子をウソでも何でも丸め込めばOKという事やね(爆)
(いえ、別にウソはつきませんけどwww)
とりあえず、徹底的に理詰めで話を進めて感心させりゃこっちの勝ち!
さぁさぁ、いざ勝負だ!!

で、まずは西軍の3人について喧々諤々。
これについてはオイラの出番はなし。
結果は順当に大谷吉継の勝利。予想通りの展開。
というか、オイラとしてはそうなって欲しかった…というのは後に繋がります(謎)

そしていよいよ東軍の話題―――なんだけど、西軍ばかりで時間をかなり使い
東軍側の発言はかなり端折られそうな予感。う〜ん、吉と出るか凶と出るか ?!


さて、ここで軽〜く歴史のおさらい。徳川家康が率いた東軍ですが、その実
豊臣恩顧の武将達を束ねていた訳なので、結束するかどうかが非常に重要な点。
特にバリバリの合戦上手である福島正則が家康に従うかというのがキーポイントで
黒田長政が家康の内意を受けて懐柔に腐心したと言う。加えて長政は西軍諸将、
特に小早川秀秋の内応にも尽力したとされる。正則なくして東軍の勝利無く、
長政なくして正則の参戦無く、といった感じ。だからオイラも東軍第一の功労者は
黒田長政、次点で福島正則だと思っているんですが…(苦笑)

そこに藤堂高虎を絡ませるとなると、強引でも成果をブチ上げるしかない!

まず第1の勲功
「東軍の結束は藤堂高虎にこそあり!」
高虎は主君を度々替えているが、その都度自身の出世に結び付けている。
また、合戦における槍働きもピカ一であり、言わば“高虎の進む先に勝利あり”
なるのである。加えて、調整能力も抜群。こういう武将が東軍の中に居るだけで
周りの武将を鼓舞し、安心させ、結束を堅くしたはずだ。血気に逸る福島正則や
池田輝政らを落ち着かせ、あるいは不安を抱く将には家康に付く理を説き
“裏方役”として高虎が動いたであろう事跡は想像するに難くない。
 #というのはオイラの勝手な推論なんだけどね(爆) まぁ、これは話の切り出し口なんで、軽くハッタリからw
   少なくとも西軍は足並みバラバラ、左近や吉継の献策も三成が却下、島津は日和見、
   田辺城の攻め手はやる気なし、宇喜多秀家はボンク(以下略)



→■丸麻紀嬢の評価:ふーん、そうなの?と言った感じ(まだ反応薄)


次いで第2の勲功
「西軍崩壊の立役者こそ藤堂高虎である!」
天下分け目の関ヶ原、と言いつつ勝敗はたった1日で決してしまう。
その最大の要因は、小早川秀秋が西軍から東軍に寝返った事と言えよう。
小早川が家康に内通したのは、黒田長政が降誘を働きかけたからとされている。
となると、一見すると黒田の働きが勝敗を決めたように見える。
しかし、しかしだ!
西軍最強の巧将である大谷吉継は小早川の裏切りを見越して布陣し
実際、山から下りて攻めかかってきた小早川軍を撃退している程なのだ。
さすが西軍MVP、見事な読みであるがその大谷軍を壊滅に至らしめたのは
小早川に続いて西軍を裏切った脇坂安治・朽木元綱・小川祐忠・赤座直保の4将が
一斉に大谷吉継陣に攻めかかったからである。そしてこの4人に内応を促したのが
誰あろう、我らが藤堂高虎公なのである。
西軍MVP・大谷の働きは賞賛すべきものであるが
高虎公の戦略は、それを上回っていたのだ!
 西軍のMVPが大谷吉継になったのは読み通りであるが、オイラにとっては「してやったり」と言った所。
  大谷の評価が高ければ高いほど、高虎公はその上であると持ち上げる事ができるからだ。
  西軍ファンには悪いが、大谷刑部には“踏み台”になって貰った(←鬼の戦略)



→田丸△紀嬢の評価:おぉー、なるほど!と言った感じ(かなり好感触)


さらに第3の勲功
「藤堂高虎の人物像は尊敬すべき!」
ここでもう1人の推薦者となった女性が発言。有名な高虎公の故事である。
「若い頃の高虎サンは、茶店でお餅を無銭飲食しちゃったんです。
 でも茶店の主人に許してもらって…」
えーっと、それだけじゃ何の事か全然伝わらないのですかさずオイラがフォロー。
まだ貧乏侍だった頃の高虎公、空腹に耐えかねて茶店の餅を金が無いのに注文。
食べだしたら止まらず、とうとう店の餅を全て平らげてしまった。
そして支払いができないのを素直に店主へ詫びるが、一方の店主は怒るどころか
あまりに見事な食いっぷりに感心し、また正直に金が無いのを申し出た事で
罪を問わず、出世払いにすれば良いと許してくれたと言う。
無銭飲食したというだけでは、むしろバツの悪い
恥ずかしい話で終わってしまうのだが…この後が本題
数年の後、この茶店の前に殿様の駕籠が停まる。
何とそれは、見事に出世した高虎であった。彼は若き日の過ちを詫びる為
わざわざ店に出向き、約束通り主人にあの日の代金を支払ったのである。
さらに家臣たちにも店の名物である餅を振舞った。
戦場での高虎の旗印は白い丸。つまり、白い餅を象ったもので
店主の恩義を忘れぬ為、それを掲げたのである。出世払いとは往々にして
支払いを踏み倒されるのがオチであるが、高虎は忠実にそれを守った。
さらに“白餅”と“城持ち”をかけ、家臣たち全員にその旗印を持たせ
「藤堂家は皆が城持ちになれるよう頑張ろう」と意気込んだのである。
裏切りや自己顕示欲が茶飯事であった戦国時代にあって
藤堂高虎の“粋な男ぶり”は、関ヶ原でも発揮されたはずである!
 「白餅」のエピソードは高虎公に欠かせぬもの。
  とは言え、それが関ヶ原に貢献するか?というと疑問なんだけど
  こういう感じに話を持って行けば、何とか… (^ ^;



さてさて、ここまでトークしまくったものの
当然、想定されるのが西軍派からの反論。
藤堂はMVPに相応しい人物なのか?として疑問が投げかけられるであろうと
いくつか予測し、当然ながらそれに対する反論を考えておりました。

想定問答その1
「裏切者は藤堂高虎だ!」
藤堂高虎は最初、浅井長政に仕えましたが、その後に主君を替え続け
阿閉貞征(あつじさだゆき)→磯野員昌(いそのかずまさ)→
津田信澄(つだのぶずみ)→羽柴秀長→豊臣秀吉と鞍替え。
さらに秀吉が没するやいち早く徳川家康へと接近。自ら
「武士たるものは七度主君を替えねば武士とは言えぬ」と言い放つほどの変り身ぶり。
西軍派からは、間違いなく藤堂は変節漢だと言われるだろう。
これに対する反論
確かに高虎は主君を度々替えてはいるが、いずれも
「主君が高虎の勲功を評価しなかった為、見限って出奔した」
「主君が没した為、別の主君に再仕官した」というものであって
「下克上の風潮に乗って、主君の寝首を欠いた」とか、況してや
「戦で負けそうになったから、土壇場で寝返った」などというのは一つも無い。
例えば羽柴秀長が病没、その後嗣である秀保(ひでやす)までが死し
大和大納言家(羽柴秀長の家系)が断絶した際には、主家への忠義を立て
高虎は所領を捨てて高野山へと隠遁、秀長父子の菩提を弔った程だ。
秀長の兄である豊臣秀吉が高虎の才を惜しんでようやく還俗させたが
このような話からして、決して高虎は“裏切者”という人物ではない。
さらに言うと、主君を替える毎に確実に出世しており、彼は
「実力を評価してくれる賢君を見定める」能力に長けていた訳だ。
そういう人物が、東軍に加わったのだから家康の勝利は明白だと言う事に…。

想定問答その2
「やっぱり藤堂より黒田なんじゃない?」
目に見えない藤堂の活躍より、明々白々な黒田の活躍こそ評価すべき。
藤堂なんて、本当に勝利に貢献したかどうか疑わしいもんだけど?
これに対する反論
確かに黒田家は関ヶ原戦役後、18万石から52万石(約3倍)と大幅に加増されている。
しかし所領は豊前国中津(大分県中津市)→筑前国名島(福岡県福岡市)
九州の中での挿げ替えでしかない。一方の藤堂家は8万石から20万石、
さらに22万石とされ、大坂の陣での軍功まで入れれば32万石(4倍)にまでなっている。
しかも所領の位置が問題で、板島丸串(愛媛県宇和島市)→今治(同県今治市)
その後に伊勢国安濃津(三重県津市)への移封だ。要するに、石高としては
黒田も藤堂もそれぞれ大幅に加増されている一方で、黒田家は「九州から出さない」
藤堂家は「より江戸に近い方へ」動いているのである。という事は、家康は
「黒田は良く働いたが、これ以上近づけたくない」と評価し
「藤堂は手元に置いてより一層働いてもらいたい」と考えていた訳である。
どちらが家康に信頼されていたのかは…もはや言を待たないであろう。

想定問答その3
「本当に藤堂って東軍勝利に貢献したの?」
感情論が先行する西軍派ならば、こういう“言いがかり”的な糾弾も考えられる。
これに対する反論
勝つか負けるかは時の運。結果が出てみなければ分からない。
ただ、藤堂高虎は東軍を「勝たせる」信念で動いていたのは確かだ。
先にも記した通り、高虎は「自分を高く評価してくれる主君」を求めた人物。
家康が主君となり、その家康が天下の主となれば、
自分が活躍する場が確実に広がると言う計算を働かせていただろう。
家康もまた、それを承知で高虎を用いた筈である。
東軍の勝利は、両者の利害が一致した相乗効果と言えるのだ。
事実、高虎は外様大名でありながら江戸幕府の中枢に用いられ
徳川家の命により、全国に幕府守護の城郭を多数築いた。しかもそれは
“徳川系城郭”と呼べる新式の構造を有し、“将軍家が使う為の城”としての
体裁を整えている。“築城の天才”高虎の面目躍如と言った所だが
幕府の軍事基幹である城郭整備を一手に任せられたと言う事は
それだけ「高虎は信が置け、使える逸材である」と家康が認めた訳だから
まさしく高虎の計算通りに事が運んだ事になろう。東軍が負けては
こんな結果は引き出せない。高虎は全力を以って東軍勝利に尽力した筈だ。
 と言う具合に、城好きの意地として何とか少しくらい
  「高虎と城」を絡めて話をする機会を窺っていたんだけどね(笑)





と こ ろ が
西軍派からは何ら反論らしい反論なし。
今まで長い時間をかけて西軍内で大騒ぎしたもんだから
すっかり東軍パートでは消耗しきっちゃったようである。
よくよく考えてみると、西軍派の人(特に歴女さん)って
自分らの好きな人以外は興味ナシって考え方だから
東軍武将が何だろうと、藤堂がどうなろうと、手をつける気がないって事なんだよね。
せっかく想定問答を色々と考えたのに、全く使う機会なしに終わりました…。
何ともはや、これが最大の誤算(冷笑)


という(非常に中途半端な所で)幕切れとなり、やや不完全燃焼だったオイラ。
こんな状態で、田丸麻×嬢の最終評価を待つ事になりましたが
果たして結果はと言えば―――





高虎公が東軍MVPで決まり〜♪ (^ー゚)v


で、高虎公の何が良かったのかと訊いてみると…
「お餅の話が凄く面白かったです!」だって。

シロモチ君戦いも何も関係なく、そこかよ… orz


お し ま い




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