中城城

琉球国　中城城

所在地：沖縄県中頭郡中城村泊・登又
■■■：沖縄県中頭郡北中城村大城：

■■駐車場：　　あり■■
■■御手洗：　　あり■■

遺構保存度：★★★★■
公園整備度：★★★☆■

中城（なかぐすく）城は、14世紀～15世紀にかけて築城された城（ぐすく）で
沖縄の城郭としては最も保存状態の良いものの一つでござる。
正確な築城年代や築城者は不明で、もともとこの地方を治めていた
按司（あじ、本土で言う地頭職のようなもの）が居城としていたようである。
発掘調査によれば、遅くとも14世紀後半には城の主要部が作られていたらしい。
尚巴志（しょうはし）の家臣で第一尚氏王統（首里城の頁を参照）成立における
功労者といえる護佐丸盛春（ごさまるせいしゅん）は、その武勇を買われ
今帰仁（なきじん）城主や初代北山（ほくざん）監守、
座喜味（ざきみ）城主を歴任した後、この中城城に配された。
中城城は首里城のすぐ北側に位置する城で、首里の絶対防衛圏となる要所であったのだ。
護佐丸の入府により城は改良され、より堅固なものへと生まれ変わった。
彼は武勇の名将であるだけでなく琉球随一の名築城家でもあり、
「相方積み（亀甲乱れ積み）」と呼ばれる先進の手法で石垣を拡張、
三の郭と北の郭を増築したのでござった。
相方積みは明治時代以降の主流となる谷積み技法とよく似た石積方法で、
この事からも護佐丸の優れた技術力を見せ付けられる。
元々読谷（よみたん）按司であった護佐丸は娘を巴志に嫁がせた縁で
重臣に列せられ、巴志の死後も中城城で堅い守りを誇っていた。
第一尚氏王統6代目の尚泰久も父・巴志以来の重臣である護佐丸を信任していたが
これを快く思っていなかったのが勝連（かつれん）城主の阿麻和利（あまわり）であった。
阿麻和利は泰久の娘である百度踏揚（ももとふみあがり）を娶って権勢を伸ばしたが
その野望は尚氏に代わり琉球全土を支配する事にあった。
勝連から尚氏の本拠である首里城へ軍を進めるには中城を通らねばならず
堅城である中城城に名将・護佐丸が陣取っていては目障りだったのである。
護佐丸を追い落とすために阿麻和利は謀略を講じる。
数度に渡り「護佐丸に謀反の心あり」との噂を流したのでござった。
初めは信じなかった泰久であったが、次第に讒言を間に受けてしまい
1458年、遂に護佐丸討伐を命じて王府軍を中城へ送り込んでしまった。
首里王には逆らえぬと観念した護佐丸は自刃、
中城城は陥落し以後は琉球王家直轄の城として存続した。
阿麻和利は王府の軍勢を以って護佐丸を討つ事に成功したが
この後、企みは露見して自らも滅びていく。
それから約400年後、江戸幕府に対して開国要求を行うために
アメリカ合衆国東インド艦隊のペリー提督が来航。
浦賀へ向かうひと月ほど前の1853年5月26日に琉球へ立ち寄った。
琉球へ上陸したペリー一行は琉球王府と外交交渉を行うと同時に
沖縄の各地を視察、中城城の調査も行った。
その優れた築城技術にペリーは驚嘆、日本遠征記に
「要塞の資材は石灰岩であり、その石造建築は賞賛すべきものであった。
石は非常に注意深く刻まれて繋ぎ合わされているので、
漆喰もセメントも何も用いていないが、
この工事の耐久性を損うようにも思わなかった」と書き残している。
城は標高150m～160mの高台にあり、東に中城湾（太平洋）を望み
西には宜野湾市街と東シナ海を展望できる。即ち、沖縄本島を縦断する軍勢は
必ず中城城から視認できるのであり、首里王府が要所として固めた事や、
阿麻和利が護佐丸を亡き者にしようと画策した理由がよくわかる。
東西約200m、南北約80mに及ぶ領域は中城村・北中城村の境界にあり
周囲を絶壁や欝蒼とした森にかこまれた天然の要害と言え申す。
石灰岩台地の最高所を一の郭とし、梯郭式に二の郭、三の郭と下る。
三の郭北側に北の郭を置き、ペリーが「エジプト式の素晴らしい構造」と賞した
アーチ状の裏門を通り外の馬場へと通じる（写真）縄張りでござる。
裏門のある北の郭と帯曲輪となる西の郭には井戸が掘られていて
現在も水が沸いている。この水は沖縄に上陸した米軍の飲料水としても使われた。
なお、正門は一の郭の南側にあるが、このあたりは南の郭となっており
御嶽（うたき）と呼ばれる礼拝所が安置されている。
沖縄の城は軍事構造物であるだけでなく、祖先への礼拝を執り行う聖域でもあった。
場所によっては住民居住地域全体を城として取り込んでいる事もあり、
本土の「武士居館・軍事城砦」という意味合いとは多分に異なるようである。
沖縄の本土復帰に合わせた1972年（昭和47年）5月15日、国の史跡に指定。
2000年（平成12年）12月2日には国連の世界文化遺産にも登録され申した。
現在、城跡は公園として整備されており駐車場なども完備、登城も楽にできる。
護佐丸が築いた石垣は今でも健在であり、その見事さにはペリーと同じように
感嘆させられる。すぐ近くに琉球伝統家屋建築で国の重要文化財に指定された
中村家住宅があるので、併せて見学してみるのがいいだろう。

現存する遺構

井戸跡・石垣・郭群
城域内は国指定史跡
国連世界文化遺産登録

首里城　勝連城