門と虎口(2)


近世城郭において、門は単体の建築物としては成り立たない。
門を設置する場所や橋・塁・曲輪との複雑な接続で
より一層の防御力を発揮するよう構成されている。
門全体を取り囲む虎口(こぐち)についての解説。

敵の侵入路
城は堀や塀によって周囲が囲われており
進入するのは橋・門が備えられた場所に限られている。
敵軍が侵入する場合でも堀を渡り塀を破壊するより
こういった場所を重点としたほうが効率がよい。
しかし、橋・門・城内通路が一直線に並んでいては
外側から城内の様子を覗え、障害も少ないので
容易く侵入を許してしまう。
これを防ぐ方法は色々とあるが、
一番簡易なものは障壁を設置するものだろう。
城外側に設置する障壁を「茀(かざし)《【図1】
城内側に設置する障壁を「蔀(しとみ)《【図2】という。
蔀を恒久的な物として土塁にしたのが「一文字土塁《【図3】である。
さらに構造的に高度になったものとして
直線の進入路を改変した屈折形態【図4】や
食い違い【図5】としたものへと発展していく。
こういった進入路の防衛構造を「虎口(こぐち)《と呼ぶ。
進入路の形態

枡形と馬出し
食い違い虎口はそれ自体が一つの曲輪となりうる形状となっている。
塁壁を両側まで塞げば、小型の閉鎖空間を作れる訳だ。
ここで作られる曲輪を枡形(内枡形)【図1】という。
枡形は橋を越えて侵入した敵を封じ込める事ができ、
城から出撃する際の武者溜りともなる。
こうした枡形を防塁の外側に作る形態もある。
これを外枡形【図2】と呼ぶ。
さらに外枡形を堀の外側に作り独立した曲輪としたものがある。
これらは馬出しといわれ、近世城郭における
最も進化した防衛構想に基づいたものである。
馬出しは丸型の丸馬出し【図3】と角型の角馬出し【図4】がある。
枡形と馬出し

総合的な防衛構想
近世城郭において門建築物と枡形虎口の組み合わせは
最も完成された防衛体系を作り上げるに至った。
虎口の攻防
敵軍が大挙して門の周囲に殺到しても【矢印赤色】
渡橋や第一門の突破で人数が制限されてしまう【矢印桃色】。
第一門を通過しても虎口で行動の自由を奪われ【矢印橙色】
頑強な第二門の破壊に時間を費やすことになる【矢印黄色】。
この間に城側からは絶え間ない射撃が加えられ【矢印紫色】
第二門の上から石落し・長槍での刺突など【水色×印】が行われる。
仮に第二門を突破しても更なる屈曲や登坂、
蔀などの障害や罠が待ち構えている【矢印緑色】。
金沢城石川門金沢城(石川県)石川門
上図と全く同じ形式の枡形虎口
門へ続く橋と高麗門を通過する敵を全周で狙撃できる [撮影協力:とんび殿]
大和郡山城の虎口大和郡山城(奈良県)の虎口
門を突破してきても更なる折れ曲がりと登り坂が控えている
待ち伏せをするには絶好の場所(上図緑色矢印の部分にあたる)



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