1998年10月 赤池見物

旅行期間:1998年10月11日(日)

主な滞在地
10月11日(日):山中湖・忍野八海・西湖・赤池・精進湖・本栖湖・白糸の滝
赤池見物行程地図


この年の夏は異常なまでの雨続きで、全国各地で
水害や増水の被害が懸念される騒ぎでござった。
富士山の麓にある富士五湖も同様で、
湖面が上昇して堤防を越える危険性が報じられ
場所によっては湖畔の道路が冠水して通行止めになっていた。
これほどの増水になると、富士五湖にはある現象が現れる。
何と湖が一つ増えて、富士六湖になってしまうのだ!
水害の危険は困ったものだが、新たな観光名所が増えるとあらば
増水も恵みの雨と喜ぶべきなのか? (^^;
何はともあれ、「今だけしか見れない」新名所を見るために
越後守殿らと共に山梨方面へと車を走らせたのである。

茅ヶ崎から山梨へ向かうには、まず北上。
相模川を渡り国道129号線を相模原方面へ。
厚木市内で左へ曲がり、清川村へと進んでいく。
開通したばかりの国道412号線の新道は、
田舎道にはもったいないくらいの(失礼)片側2車線道路で、実に快適だ。
愛甲郡愛川町にある半原交差点でさらに左折すると
道路は宮ヶ瀬ダムへと続く。宮ヶ瀬ダムは1991年(平成3年)から
建設工事の始まった重力式コンクリートダムで、相模川の支流である
中津川を堰き止める形で作られた神奈川県最大のダム。
県内のみならず、全国でもトップクラスの大きさを誇っている。
ちょうどこの年に試験貯水が満水になり、神奈川県の新たな名所として
知られるようになってきた場所でござるな。
拙者はこのダム工事が始まった頃から足しげく清川村へ通って
湖が出来ていく様を見続けていたので、
「あぁ、ようやく完成したんだぁ」という感想。
そんなダム堤防を横目に見つつ、湖を跨ぐ「やまびこ大橋」を渡り
車は一路、国道413号線へひた走る。413号線は、道志みちと呼ばれ
神奈川県から山梨県南都留郡道志村へと抜ける街道だ。
比較的交通量が少ないため、富士山方面へ行く格好の抜け道になっている。

道志みちを抜けると、そこは山中湖村。平野交差点でちょうど山中湖に突き当たり、
右へ向かえば山中湖の北岸、左へ向かえば南岸を周回するようになる。
南岸の方が観光地として商業施設の林立する地域になるのだが
今回は敢えて北岸の静かな湖畔道路を選択。何たって、この増水騒ぎで
観光客が増えてる時期だからねぇ。少しでも渋滞回避を考えなきゃ。
で、見てみました山中湖。確かに水量は多くて、堤防の上限まであと50cmくらいかな?
それでも「これじゃ溢れる程じゃないじゃん〜★」なんて少し呑気な考えで
この時は笑いながら越後守殿らと話しておりました。

山中湖から西へと進み、河口湖方面へと向かう道すがら、
やはりこのあたりで最も美しい景色と言える忍野八海に立ち寄る。
富士の伏流水が至るところで湧き出し、いくつもの綺麗な池が並ぶ八海は
ため息が出るほど素晴らしい…。深い池の底まで見通せる透明な水は
触れてみれば手が切れそうなほど冷たく、空の青さを写し出す。
はぁ、ここは何度来ても良いところですなー (^-^)
しばしのんびりと、八海を散策して自然の豊かさを体感しておりました。

富士吉田市内まで来ると、予想通りの渋滞。
まぁ、ここはいつも混む所ではあるんだけどね。
どうにも埒が明きそうにないので、河口湖は通過して
そのまま西湖へと進む事に決定。道は国道138号線から139号線へと切り替わり
途中から街中の裏道をウロウロと徘徊(?)。
何だかイマイチわからないまま、いつの間にか河口湖の西側へと出た我々は
結果的にこの道でOK、という場所にたどり着き
西湖への進路を取ったのでありました(何だかなぁ)

で、山中湖での笑い話はどこへやら。
西湖はかなりの増水で、南岸は通行止め。
こりゃマジで水害という雰囲気になってきたなぁ…。ヤバいヤバい。
限られた北岸道路を走りつつ、横目に西湖を見てみれば
ありゃ、キャンプ場が水没しておる!
こうなると笑っていられないねぇ。
呑気に観光という雰囲気ではなくなってきたので、写真を何枚か撮っただけで
そそくさと西湖を後にしたのでした。

西湖北岸を通る山梨県道21号線は、西八代郡上九一色村に入ったところで
国道138号線と合流する。このあたりから、道路渋滞が激しくなってきた。
我々と同じく、富士北辺に出現した“第6の湖”を見物しに来た観光客が
大挙して押し寄せているからだ。まぁ、ウチらもそのうちの一組なのだから
文句も言えず、ただただ渋滞に飲まれて時間を過ごすしかない。
気がつけば時刻は既に午後1時過ぎ。まだ昼飯も食べていないのだが
この渋滞はかなり厄介で、なかなか先に進む様子がない。
かと言ってここで引き返しては、お目当ての湖にはたどり着けない。
ふむぅ、困ったものじゃのぉ…。
ひたすら耐える時間を消化するために、車内は馬鹿ッ話で盛り上がりつつ
のろのろと進む車列に延々と追従。ただ待つだけの時間って、退屈だよねぇ?
これじゃ歩いたほうがよほど早いよ、と思いながらも
時刻は午後2時半になろうとしておりました。

で、ようやく、よーうーやーくー(超強調)お目当ての場所が近づいてきました。
138号線の途上、瀬々良橋の下に出現した“6つめの湖”、その名も「赤池」です。
当然の事ながら、普段は何もない場所ですから駐車スペースなどあるはずがない。
しかし、観光客はこれだけ大挙して押し寄せている。
と、その顛末は「路駐の嵐」となるわけで、国道の両脇は完全に駐車場状態。
まぁ、我々もその中に入っているんだから偉そうな事は言えませんがね (^^;
赤池
赤池

こちらがその赤池です。
真上に架かる橋から撮った写真なので
イマイチ立体感がなくて分かりにくいか?
でも、雲を映し出して輝いているのは
わかって頂けますよね。
そんな感じで観光客が賑わう中、眺めてみましたよ、赤池。橋の上から真下を見下ろして。
確かに、「湖」というほどの大きさではなく「池」と呼ぶのが正解ですやね。
通常は富士の樹海の真っ只中という場所。ちょっとくぼんだ地形になっている所が
異常降雨で水溜りになり、そのまま池になってしまった状態なので
もともとあった樹海の植物が完全に水没している。
少しばかり背の高い草木だけ、水面の上に顔を出しているような感じなんだけど
これって…よくよく考えてみると恐ろしげだよねぇ?
植物だからまだいいものの、はっきり言って水攻めなワケだから
もし動物がそこに居たなら、生きながらにして沈められているって事に…。
まぁ、見物しているその時はそんな事全然考えちゃいなかったけどさ(御気楽)

斯くして赤池をひととおり見物した後は、とっとと撤収。
後続はまだまだ渋滞しているのであまり長居して場所を占拠し続ける訳にはいかないし
何よりも昼飯!いくら何でも時間かかり過ぎ!!腹減った〜 (><)
赤池から速攻で離れて、その先にある精進湖のレストハウスに駆け込んだ拙者らは
ようやく昼食を摂る事にした…のだが、考える事はみな同じ。
赤池へ向かう渋滞の列は、そっくりそのまま昼食待ちの混雑へ変化しており
これまたえらい時間がかかってしまった。結局、昼飯というよりおやつの時間になり
時刻はもはや午後3時半過ぎ。食事が出るまでの間、窓の外に広がる精進湖を眺めていたが
こちらも湖畔は完全に水没し、所々に木の天辺が水面上に浮き出ていた。
いやぁ、やっぱり今回の異常増水は凄いものですなぁ。

渋滞ですっかり時間を食ってしまったので、ここからはペースを早めて移動する。
精進湖からさらに南下し、本栖湖へと到着した我々は、
これまた完全に湖岸が水没した光景を目の当たりにした。
うぁー、こりゃ凄い、というかひどい。はっきり言って立ち寄れない。
今まで見た湖の中でも、ここは特に増水が激しく
もはや「被害」と呼ぶべき状態になってしまっている。
さすがにこれ以上のんびりと増水見物という状況ではなくなってきたので
驚きつつも長居せずに本栖湖から静岡県方面へと車を進めたのでござった。

国道139号線は富士の裾野を貫通し、朝霧高原から白糸の滝方面へ延び
その道を走る我々は、先ほどの渋滞とは打って変わって快調なドライブを楽しむ。
―――と思っていたら、ありゃ?検問?!なんでこんな道で??
タダの観光客ですから、飲酒運転でもないし、何もしてませんよ。
シートベルトだってちゃんとしているし、ほら。いったい何ですか?
いぶかりつつ周囲をよく見てみたら…おや?ここはニュースでよく見る場所だわ。
何とそこは当時世間を騒がせていたオ○ム真理教の富■宮総本部だったのだ。
(この名前も今となっては懐かしいものですな)
おかげで至る所に警察官がウヨウヨ、報道陣もズラ〜リ。
職務上、お巡りさんはそこを通る総ての車を停めて身元の確認をしているのだ。
もちろん、この道は何もなければ観光道路として使われる道だから
別に全部を疑っているワケでもなさそうで、どう見ても教団とは無関係な我々は
「どこ行くの?」「いや、白糸の滝の方へ…」「じゃぁどうぞ」という会話だけで
あっさりと通行許可。ま、当然だよね。別に何も悪さはしてないんだから。
むしろこんなバカバカしい検問をやらされるお巡りさんに同情しますわ。
おかしな連中が居座っているせいで、こんな辺鄙な場所に出張らされ
面倒な検問やら監視やらをしなきゃいけないんだからねぇ。
ホントにご苦労様です。
いやぁ、それにしても検問なんて予想だにしていなかったから(当たり前だ)驚いた。
まさかこんな所があの有名な(?!)オウ△の★士宮総本部だったとは…。

言うまでもないことですが、今現在は撤去されてありませんので、念のため (^^;

検問を通ってすぐに到着したのが白糸の滝。富士山麓随一の観光地ですな。
観光駐車場に車を止めて滝方面への遊歩道を歩くと、白糸の滝よりも手前に
音止の滝があるので、まずはそこから見物。普段も豪快な滝でありますが
増水の時節とあらば、それにも増して迫力ある光景になってました。
その昔、父の仇を狙う曽我兄弟がこの滝の傍らで密談をした時に
滝の音が静まり、計画が成就したという伝承から名付けられた滝ですが
静まるどころか轟音となって辺り一面に瀑音が響き渡っておりましたなぁ。
音止の滝にかかる虹
音止の滝にかかる虹

時間が丁度良かったのに加え、
増水で激しい水煙が立ち込めて
上手い具合に虹を撮影する事が出来ました。
これも異常増水のおかげと言うべきなんでしょうか?
う〜む、良いのか悪いのか…。
ちなみに、この左側に滝があります。

遊歩道の階段を下りていくと、見えてきたのは白糸の滝。
この滝の名を知らぬという人はいないでしょう。
これまた、普段は絹糸のような細い筋がいくつも並ぶ優美な滝なのが
水量が増してナイアガラの滝か(というと言い過ぎだけど)というような状態。
白糸の滝、というよりも白布の滝、というのが正しいか?
断崖を覆いかぶせるように水のカーテンができておりました。
川面に下りてみれば、もうもうとした水しぶきの霧がたちこめ、
四方八方から流水の音が、まさに洪水のように溢れてきます。
こんな迫力ある白糸の滝、後にも先にもこの時だけでしたねぇ。

白糸の滝を見終えた所で、時刻は午後5時を過ぎ周囲は夕焼けに。
帰路の時間を考えれば、もうこれ以上の周遊は無理なので
家路に就く事としました。国道139号線をそのまま南下し、富士宮市街を通過。
JR身延線の富士宮駅前を通り、富士市へと進めば今度は国道1号線へと切り替え。
あとは箱根の山を越え、一目散に茅ヶ崎へと向かうのみ。
すでにとっぷりと陽は暮れ、あたりは暗闇になっていたが
帰りの車内は今日一日の感想に花が咲き、闇夜を吹き飛ばすような明るさ♪
いや、増水だけに洪水のような話題の流れと言うべきかな?
渋滞に辟易もしましたが、「今しか見れない風景」を堪能した貴重な一日でした。


◆◇◆ 長雨の 溜まる富士野の 樹海にて 人も溜まるる 赤池の秋 ◆◇◆




本 丸 御 殿 へ 戻 る


城 絵 図 へ 戻 る